<SHO-BLUE>X JAPANのYOSHIKIはエンターテインメントの世界の最高峰で闘ってきた。ドジャース大谷翔平投手(29)が拠点とするロサンゼルスに90年代から根を張り、音を奏で、歌詞を紡ぎ出してきた。4月にドジャースタジアムで米国…

<SHO-BLUE>

X JAPANのYOSHIKIはエンターテインメントの世界の最高峰で闘ってきた。

ドジャース大谷翔平投手(29)が拠点とするロサンゼルスに90年代から根を張り、音を奏で、歌詞を紡ぎ出してきた。4月にドジャースタジアムで米国国歌を大谷の前で演奏した男は、二刀流に何を感じるのか。【取材・構成=広重竜太郎、望月千草】

   ◇   ◇   ◇

YOSHIKIには大谷のように2本の刀がある-。そう思っていた。

「僕もある種の二刀流でドラムとピアノと(笑い)。でもさすがにピッチャーもしてバッターもするということと比べちゃ、申し訳ないです」

ドラムとピアノ。さらには、ロックとクラシック。対極を自在に行き来している。だが曲を作る時。ロックとクラシックを作り分けない。

「そういうのを考えずにメロディーを作ります。それが後にロックになったり、クラシックになったりする。クラシックピアノは4歳から、ロックは10歳からやっているので、それが自然なんですよね」

ハッとさせられる。見る側は境界線を引く。投手と打者。ロックとクラシック。だが演者には本来、ボーダーレスなのではないか。大谷は野球を、YOSHIKIは音楽を極めようとしている。シンプルな思いなのではないか。

「あ~、そうかもしれないですね。『紅』という曲も最初はロックでデビューしたけど、クラシックにもなる。甲子園の応援歌にもなるし、みたいな(笑い)」

大谷も球児だったころ、X JAPANの代表曲「紅」は耳にしたであろう。YOSHIKIが初めて、高校野球の中で奏でられているのを聞いたのは08年だった。

「僕の母校(千葉・安房高)がセンバツに出場することになった。寄付をさせてもらって生徒たちみんなが甲子園に応援に行けるようになったんです。ちょうどX JAPANの再結成ライブの時でリハーサルスタジオで見ていたら『紅』がかかって、すごいビックリしました」

静かなイントロから入り、激しい曲調に転換する「紅」。大谷という唯一無二の選手を曲で表現するなら、という質問にも、重ねた。

「自分の曲の中だと自然と『紅』に行ってしまいますね。甲子園の(応援歌の)こともありますが。(大谷に合うのは)すごい激しい曲になるんじゃないですか。会ったりした時はすごく穏やかな、紳士な方でしたが」

4月16日のドジャースタジアム。米国国歌演奏の前に初めて言葉を交わした。「すごく何かすてきな、前向きな良いオーラが漂っているなと」。わずかな時間でも感じ取れる空気感があった。20代後半の大谷と同年代でYOSHIKIもエンターテインメントの中心地、ロサンゼルスに拠点を構えた。

「自分自身もロサンゼルスに長く住んでいて、そういうスーパースターの方たちがこうやってLAで活躍されているのはジーンときました。自分が(20代後半で)LAに来た時は名があるというわけではなく、僕はこれから挑戦するというところだった。大谷選手とかはすごいところに今いるじゃないですか。すごいと思いますし、いろんなプレッシャーも背負っているんだろうなと」

控えめだが、重圧をかたわらに置き、身を削ってきた。YOSHIKIは首を、大谷は右肘を痛めながら最高のパフォーマンスを追い求める。

「ファンのみなさんの温かい言葉だったり『自分はまだ必要とされているんだ』みたいなことが前向きにつながる。首を2回手術して人工椎間板も入っているんですが、僕は作曲家という顔もあるので、いざとなればというのもある。大谷選手も二刀流という中で手術を乗り越えられたのはすごいと思います」

YOSHIKIは米マディソン・スクエア・ガーデン、米カーネギーホール、英ウェンブリー・アリーナ、音楽の世界3大殿堂を制した。世界の頂を視界に捉えているのではないか。

「『Rusty Nail』という曲で『何処まで歩いてみても涙で明日が見えない』という詩がある。一瞬一瞬ならハリウッドの(日本人で初めて入れた)チャイニーズ・シアターの手形足形のような瞬間があり、あぁとは思うんです。でも総合的に考えるとやり遂げた感はないですね。全然と言うとなんですが、まだ折り返し地点に立っていない気持ちがしますね」

世界で闘うものにしか見えない景色がある。だからこそ分野は違えど、大谷の果てしない歩みが理解できる。

「プレッシャーなんて僕の何十倍なんじゃないですかね。今の時点でもすごいことを成し遂げているとは思うけど、今後も大活躍をしてほしいですね。自分もここまで頑張っている日本人の方がいると、頑張れる気がします」

■8月2日からグランドハイアット東京で、ディナーショー

「EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2024 in TOKYO JAPAN」(同31日まで、昼夜13公演)を開催する。今回も例外なく、“世界一豪華”だ。「ワインやシャンパンもパワーアップしてます。もちろん音楽も。新曲を披露したりします」。ソロ楽曲などのライブ演奏、YOSHIKIが監修した料理など、五感で楽しむことができる充実の内容だ。日本人アーティスト史上最高額として注目を集めた1席30万円のVIP席は応募が殺到。先行期間内に、急きょ受け付けを締め切るほどの反響があった。アイドルさながらの“ファンサ”タイムも行われる。客席を練り歩くコーナー、VIP席特典にはYOSHIKIとの写真撮影タイムが設けられる。至近距離での交流に「ドキドキしますね。そういった要望が結構あったみたいで。スタッフの皆さんに説得されました(笑い)」。世界一幸せなひとときを届ける。

◆YOSHIKI(ヨシキ)本名、年齢未公表。千葉県生まれ。作詞家、作曲家、「X JAPAN」/「THE LAST ROCKSTARS」のリーダーとしてピアノ、ドラムを担当。個人としては音楽活動のほか、アパレルやワインブランドのプロデュース、映画製作など、垣根を越えた創作活動を行う。23年には、米ハリウッドのTCLチャイニーズ・シアターに日本人初となる手形と足跡を収める快挙を達成。また、長年にわたって慈善活動も精力的に行っている。