6月代表ウイークが終わり、欧州組は束の間のオフを楽しんでいる。伊藤洋輝のバイエルン・ミュンヘン移籍が正式決定。毎熊晟矢(C大阪)のAZ移籍も本決まりになりつつある。だが、大半の日本人選手たちの去就はここからが本番と言っていい。  新シーズ…

 6月代表ウイークが終わり、欧州組は束の間のオフを楽しんでいる。伊藤洋輝バイエルン・ミュンヘン移籍が正式決定。毎熊晟矢(C大阪)のAZ移籍も本決まりになりつつある。だが、大半の日本人選手たちの去就はここからが本番と言っていい。

 新シーズンに突入する前に、03-04シーズンを振り返ることも大切だろう。とりわけ、昨夏に新天地へ赴いたサッカー日本代表メンバーにとって1年目というのは地盤を築くうえで重要な時間だった。そういった面々に改めてフォーカスしてみることにする。

 最も大きな成果を残した1人と言っていいのが、30歳にして世界最高峰クラブ・リバプールに赴いた代表キャプテン・遠藤航だろう。電撃移籍が実現した当初は「いくらシュツットガルトでデュエル王になった選手でも、リバプールで定位置を確保するのは難しいのではないか」といったネガティブな意見が飛び交うことも少なくなかった。

 実際、11月まではプレミアリーグの出場機会が乏しく、カップ戦要員と位置づけられていた。本人も代表に戻ってくるためにコンディション面の不安を報道陣に聞かれていたが、

「毎週木曜日(のヨーロッパリーグ=EL)に試合をしているので、週1ペースで調整するサイクルはドイツにいた時と変わらない」と本人は普段通りの姿勢を強調。ユルゲン・クロップ監督の求めるボール奪取からの切り替え、前へつけるスピーディーなタテパスに磨きをかけ、周囲との連携確立に集中した。

■「自分も今はそういう環境に身を置いてる」

 こうした取り組み方はシントトロイデンからシュツットガルトに移籍した2019年と全く一緒。最初出られなくてもブレずにやるべきことを続ければ、必ず道は開けると本人は分かっていたのだろう。その成果が12月頃から出始める。

 最初はマック・マクアリスターの負傷がきっかけだったかもしれないが、遠藤は穴埋め役以上の存在感を見せつけ、瞬く間にアンカーのレギュラーの座を奪い取ることに成功したのだ。

 1~2月のアジアカップ(カタール)でチームを離脱することが大きなダメージになるという見方もあったが、戻ってからも先発を外れる機会は少なかった。2月のカラバオカップ決勝・チェルシー戦でも120分間フル稼働し、タイトル獲得の原動力になった。

「1シーズン通して試合にも絡めたんで、そこはポジティブに考えている プレミアでの高いレベルでの経験も個人的にはすごくよかったと思う。W杯が終わって上位に行く他の国の選手たちが普段からタフな日程の中、チャンピオンズ(欧州CL)をやったり、リーグ戦も高いレベル中でやってることを感じていたんで、自分も今はそういう環境に身を置いてるところが一番のメリットですね」

 遠藤は昨季公式戦44試合試合出場3ゴールという結果に納得の表情を浮かべていた。
「あとは試合に出続けるっていうことが大事」と本人も強調したが、重要なのは新シーズンだ。オーバーエージ枠でのパリ五輪出場も有力視される中、アルノ・スロット新監督体制でどう扱われるかは全くの未知数。現地メディアでは悲観的な報道もあるだけに、それを一蹴してほしい。

■11得点も「満足できるシーズンではなかった」

 もう1人、我々にサプライズを与えたのが、オランダ1部1年目で11ゴールをマークした小川航基(NECナイメンヘン)。初めての海外挑戦でここまで結果を出すと想像していた人はそう多くなかったはずだ。

「僕としてはもうちょっと点取れたと思っているし、最低ラインのことをやったっていうところ。周りからしたら『1年目でよくやったシーズン』って思われるかもしれないですけど、僕としては満足できるシーズンではなかったなと。あと3~4点は伸ばさないといけなかったかなと思いますね」と本人はやや厳しい自己評価をつけている。

 それでも前線でボールを収めて起点になる仕事には磨きをかけたという自信はある様子。

「前線で体を張る部分、相手をブロックして起点になる仕事は監督・コーチからも強く要求され続けてきたし、手ごたえを得たところ」と小川も代表期間に力を込めていたが、それは他の代表FWと比較しても大きなアドバンテージになるはずだ。

 得点とポスト役という仕事の両方を突き詰めていくことが来季の彼に託されるタスク。目下、26歳ではあるが、格上クラブを目指せない年齢ではない。さらに数字を引き上げ、ステップアップを狙ってほしい。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

いま一番読まれている記事を読む