プロボクシングの東洋太平洋女子スーパーバンタム級王者で、大分県竹田市出身の菊池真琴選手(37)=石川ジム立川=が9日、東京都立川市で世界ボクシング機構(WBO)アジア・パシフィック女子バンタム級王者のぬきてるみ選手(35)=真正ジム=に挑…

 プロボクシングの東洋太平洋女子スーパーバンタム級王者で、大分県竹田市出身の菊池真琴選手(37)=石川ジム立川=が9日、東京都立川市で世界ボクシング機構(WBO)アジア・パシフィック女子バンタム級王者のぬきてるみ選手(35)=真正ジム=に挑み、判定で敗れた。世界ランカーを相手に真っ向勝負の打ち合いを挑む姿に、会場から大歓声がわき起こった。

 サウスポースタイルの菊池選手は右ジャブ、左のフックやストレートを効果的に使い、2回には左ストレートが王者を一瞬ぐらつかせた。プレスをかけながら強打を繰り出す王者に必死に応戦。8回まで壮絶な打ち合いになったが、決定打を欠いた。

 指導してきた石川ジム立川の石川久美子会長は試合後、「いい試合ができたので、まだ先はわからない」。菊池選手は噴き出る汗をぬぐおうともせず、語った。「今は負けてどうしようと思っているんですが、(対戦は)楽しかった。打ち合いになると感情的になるので、基本を徹底し、すべて見直したい」(奥正光)

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 リング上の壮絶な打ち合いに、大歓声がわき起こる会場の片隅。菊池選手の母・恭子さん(71)は、リングの北側の前から11列目で、娘の激闘を見守っていた。この日は朝、大分県竹田市から熊本空港を使って上京。

 「毎回、泣きそうです。あの甘えん坊が、ファイターになりました」

 同市で生まれた菊池選手は4人姉妹の末っ子。小学3年で剣道を始めた。その時から目標は日本一だった。国東町立富来中学校(当時)へ転校し、高校は隣県の強豪・阿蘇高校へ進んだ。大学まで剣道一筋だった娘が、しばらくたってボクシングで五輪をめざすと言い出した。

 「剣道は面をつけるが、ボクシングはそのまま殴られるから……」。娘の身体を案じながら、大事な試合に駆けつけた。

 あの時も心配した。菊池選手がプロに転向後、レズビアンであることを公表した時だ。

 「こういうことを、あえて言う必要がなかったんじゃないかと思ったんです。だけど真琴には、少数の人たちの味方にならなければという思いがあった」

 東京に住む菊池選手の姉の一人も、背中を押してくれた。「普通に、いっぱいいるよ」と。だから切り替えた。

 「真琴は、真琴だから」と恭子さん。この日の敗戦後は、菊池選手のいまの気持ちを思いやった。「お疲れさましか言えない。だいぶ落ち込むだろうな」。今度竹田に帰省する時は、また用意するつもりだ。

 「とり天かな、だんご汁かな」(奥正光)