トレーニングコーチの塩多雅矢氏…雨に対して「いい意味で抵抗感をなくして」 これから本格的に突入する梅雨の時期は、野球選手にとって調整が難しい季節でもある。大事な夏の大会前にもかかわらず、雨の影響で数日間、外で練習ができないことも十分に想定さ…

トレーニングコーチの塩多雅矢氏…雨に対して「いい意味で抵抗感をなくして」

 これから本格的に突入する梅雨の時期は、野球選手にとって調整が難しい季節でもある。大事な夏の大会前にもかかわらず、雨の影響で数日間、外で練習ができないことも十分に想定される。加えて、定期試験前で部活動を制限されるケースもあるだろう。トレーニングコーチとして約20校の中学・高校の野球部をサポートしている塩多雅矢氏は「焦らないでほしい」という。

「第一に考えてほしいのは、(本番を迎える)夏の体調です。梅雨の時期に頑張らないといけないというのは気持ちの上ではわかりますが、頑張ることに適さない時期とも言えます」

 雨上がりで高温多湿の日にいきなりハードな練習をすれば、熱中症のリスクが高くなる。塩多氏は、今の時期の備えとして、体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」の必要性を説く。暑熱順化には個人差もあるが、数日から2週間程度かかるため、気温が高くなる前から軽いジョギングなどで汗を出すなど、余裕を持って準備していくことが大切だ。

「汗をかきやすい環境を練習プログラムに入れて、じわじわと慣らすのが理想です。暑さに慣れると、早い段階で汗が出るようになります。例えば20分ジョグをして、1日目は15分ほどで汗が出たとします。何日か続けた後、5分くらいで汗が出てくれば、暑さに慣れたサインになります」(個人差があるので時間はイメージ)

「最初の頃の汗の成分は濃く、体の中から出ていく栄養素も多いので、スポーツドリンクでミネラルなどを補給しながら行いましょう。サウナや、湯船にしっかりとつかることも、暑熱順化に貢献すると言われています」

天候を選べないが、準備は誰にでもできる

 雨上がりには体をじっくりと慣らすことも重要だが、あえて「一番難しい実戦練習をやってみるのもいい」と塩多氏。悪天候でまともに練習ができないまま試合を行う可能性もゼロではないため、万が一に備えるのも指導者の務めだ。

「例えば2、3日間、雨が続いた時に、選手からどれくらい実戦感覚を奪っているのかを見ておくことも大事です。この選手は雨上がりでは使いづらいからと、打順や起用法を変更する判断材料にもなります。それを梅雨の時期に把握することができると、大会で使えるカードも増えます」

 試合中に雨が降ることも、練習で想定しておく。野球は快晴の日ばかりにできるとは限らない。すぐに中止にしたり、室内に駆け込んだりするのではなく、濡れたボールやバットの感覚、グラウンドのぬかるみ具合などをチェックする。

「雨に慣れることって、ないと思うんです。雨に対して、いい意味で抵抗感をなくしてほしい。『あの時の雨よりはマシだよね』という考えになれば、やりにくいことに変わりない中で、ちょっとでも精神的優位に立てます。実戦でもトレーニングでも、1日くらいそういう体験をしてもいいのかなとは思います」

 天候を選ぶことはできないが、さまざまな条件を想定し、準備をすることは誰にでもできる。どんな場面でも慌てることがないように対応していきたい。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)