昨夏、沖縄などで開催されたバスケットボールのワールドカップ(W杯)でパリ五輪出場権を獲得した男子日本代表。その激闘を振り返るドキュメンタリー映画「BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち」が、6月7日から全国で公開されている。 試合…

 昨夏、沖縄などで開催されたバスケットボールのワールドカップ(W杯)でパリ五輪出場権を獲得した男子日本代表。その激闘を振り返るドキュメンタリー映画「BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち」が、6月7日から全国で公開されている。

 試合映像や選手、関係者へのインタビューも収録されている。ナレーションを担当したのは、俳優の広瀬すずさん(25)。収録の直後に話を聞いた。

――収録中もかなり興奮していたと聞きました。

 「あれを黙って観ていられないですよ。映像で観て、『やっぱり、すごかったな』ともう一度思いました。『なんだ、このプレー』みたいな、すごいプレーもいっぱい。これが、日本中の皆さんにバスケを知ってもらうきっかけになったんだな、と」

 「当時は、選手たちの『表』の部分、試合中の姿しか知らなかったんですが、この作品ではチームの『中』の姿も観られて、言葉を聞けて、とてもよかったです」

――ナレーションをしながら、当時の光景、熱気を思い出したんですね。

 「昨夜も一度、家で観たんです。気合が入って熱くなっちゃって、カーディガンを脱いでタンクトップで観ていました。今日はさらに熱くて、上着を脱いでやっていました。なんか、体温がどんどん上がってきて『スポーツっていいな』と改めて思いました。興奮でしたね」

――フィンランド戦、ベネズエラ戦の逆転勝ちなど、W杯は劇的な場面の多い大会でした。印象的な場面は?

 「私は2戦目のフィンランド戦から観に行ったんです。あのスリーポイントシュートが連続して入った場面は、普通では考えられない、なかなか観られない景色でした。選手たちのメンタルの強さ、集中力の高さにすごく感動しました」

 「一方で、試合の合間の練習日の様子を今回の作品で観たら、想像以上にチームが明るかった。良い意味で“オンオフ”ができていたんだな、と感じました。もちろん一人一人は疲れが取れていなかったり、気が抜けなかったりというのはあったと思うんです。けど、信じる気持ちがあったから、パリ行きの切符をつかめたのだな、と」

――熱に浮かされている感じではなかったということですね。

 「思っていたより、チームが(試合以外では)“フラット”なのがすごく印象的でした。そして、代表の選手やチームの皆さんが、おなかの底からフツフツと気合が湧き立っている感じがすごく面白かった。ドキドキする瞬間もありましたが、全員が『行ける』と思っていたあの空間。選手たちにしか分からない心の動きとかを、言葉にして改めて聞けました。感動するな、と思う場面がたくさんありました」

――自身も小学校、中学校でバスケをやっていたんですよね?

 「姉がプレーしていたチームで、小学2年の時に始めました。『3、4年くらいでやめる』って言っていたけど、やめる直前にやめることにビビってしまって(笑)。この仕事を始める前の、中学3年生までやっていました」

――かなり真剣に打ち込んでいたと聞きました。

 「小5から監督になった方が、『全国めざすぞ』と言っていて、夏休みとかは本当に練習を9時間くらいやっていました。転ぶ練習とか、コートギリギリで相手にボールを当ててマイボールにする対策とか、いろいろやりました。体力づくりとして、ずっと走っている日も。平日は放課後に練習するほかにも、朝は運動場を20周走っていました」

 「小学生の時はすごく本気でバスケをやっていたんですけど、私や仲の良かった子は平和主義で(笑)。その後は、『もう頑張るバスケはやりたくないね』って地元の中学で部活でやっていました。本当に楽しい部活でした」

――推しの選手はいますか?

 「皆さんのことを応援していますが、私がガードをやっていたので、河村勇輝選手みたいな才能は、本当にすごいなと思います。ゲームづくりをするポジションでありながら、シューターにもなれるし、中にも切り込めるし、ディフェンスもできる。どこかに特化するというより、全部に特化されている。すごくぜいたくな選手だなと思って」

――バスケの魅力はどんなところだと思いますか?

 「コート内の5人のメンバーのコミュニケーションの距離が、他のスポーツに比べてすごく近い。そして、5人が一つにならないといけない。そういう『チーム感』じゃないけど、何人かで力を合わせて一つになったみたいな空間があります。今、俳優の仕事をしていて、一つの作品のためにファミリー感、チーム感がある現場、環境がすごく好き。今につながっているモノはあるんだと思います」

 「あとは展開の速さ。何が起こるか分からないから、W杯での日本の逆転勝ちのような試合もあり得る。不可能だと思っていたことが可能になる。そんな瞬間を目の当たりにできるスポーツ。バスケってやっぱり面白いなって、W杯は大興奮していました」

――今夏はパリ五輪もあります。

 「この作品でバスケの魅力が伝わって、応援してくれる人が増えたらいいですね」(聞き手・塩谷耕吾)