衝撃的なルーキーイヤーを送る今永。複数球団の争奪戦の末にカブスに入団した男を逃したチームにもそれなりの事情がある。(C)Getty Images  今年1月にメジャーリーグの名門カブスに入団した今永昇太は、驚異的なデビ…

 

衝撃的なルーキーイヤーを送る今永。複数球団の争奪戦の末にカブスに入団した男を逃したチームにもそれなりの事情がある。(C)Getty Images

 

 今年1月にメジャーリーグの名門カブスに入団した今永昇太は、驚異的なデビューシーズンを送っている。

 カブスと4年総額5300万ドル(約77億円)の大型契約を締結した30歳は、その価値に見合うだけの活躍を披露。ここまで11先発で62.1イニングを投げ、5勝(1敗)をマーク。防御率1.88、WHIP1.04、QS率54.5とエース級の働きを見せている。

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 直近2試合では連続して5失点とやや打ち込まれてはいるが、複数球団の争奪戦を制したカブスにとって、今永獲得は「成功」していると言えよう。

 獲得を逃した球団にとっては羨ましい存在となっている今永。そんな左腕獲得に失敗した球団幹部は舞台裏を告白している。米メディア『The Athletic』は、ジャイアンツの編成総責任者であるファーハン・ザイディ氏を直撃。「最終的にイマナガにオファーを出さなかった」という同球団の決断理由を深堀した。

 なぜ、ジャイアンツは今永獲得から撤退したのか。ザイディ氏は「我々が作成した投球評価の指標は、彼(今永)を高く評価していた。速球、スプリット、変化球すべてにプラスの評価がついていた。しかし、スカウティング部門からのレポートではそれほど強く推されていなかった」と告白。“現場の声”が上層部の考えを鈍らせたとしている。

「彼の投球を効果的なものにしている理由は、肉眼では計り知れなかった。ただ、その理由は理解できるものだった。国際的なスカウティングは争奪戦の競争率を考慮すると、独自のパターンを持つちょっとした技術よりも、より大きな武器に注目が集まってしまうんだ」

 また、「環太平洋地域から投球データが入手可能になったことで、理論的にはより健全な評価が出せるようになったが、それでもハイエンドの速球に頼れない場合、決め手に欠けてしまうかもしれない」とも明かしたザイディ氏は、今永に対して各球団のスカウト陣が4シームに対する懸念があったことを指摘。「先発投手としての彼を高く評価した球団のスカウトもいると思う。彼らはおそらく独自の評価基準を最重要視していたのではないだろうか」と明かした。

 無論、事後にジャイアンツの補強方針を論じるのは結果論とも言える。しかし、今季のチーム防御率が30球団中26位(4.47)という苦境を見るに、逃した魚はあまりに大きいと言えそうだ。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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