東京オリンピックでショートボード競技が正式種目として採用され日本人選手たちの活躍が顕著だった「サーフィン」。今夏に開催されるパリオリンピックでも採用されており、サーフィンに対して世の中の機運が高まっている一方で、次回2028年ロスオリンピッ…

東京オリンピックでショートボード競技が正式種目として採用され日本人選手たちの活躍が顕著だった「サーフィン」。今夏に開催されるパリオリンピックでも採用されており、サーフィンに対して世の中の機運が高まっている一方で、次回2028年ロスオリンピックでの採用が現実的になり、注目が集まっているのが「サーフィン・ロングボード競技」だ。そんな現在競技人口も競技レベルも世界的に向上しているロングボード競技にて、今シーズンに世界最高峰の舞台とされるWLT(ワールドロングボードツアー)へ挑戦するプロサーファーがいる。

それが現在2年連続でJPSAグランドチャンピオンとなっており国内外で好成績を残している浜瀬海(はませ・かい) 選手だ。日本が世界に誇るトップロングボーダーの一人である彼は、昨シーズンではアジアリージョンにて3番手となり、惜しくもあと一歩のところでWLTへの出場資格を逃した。その悔しさから今シーズンはWLTに向けて照準の合わせ、数々のアジアリージョンのQS大会にて表彰台を獲得。見事WLTの出場資格を手に入れたのだ。

今回は、世界最高峰の舞台に満を持して挑戦する浜瀬選手にインタビュー。悔しい経験を乗り越えて挑む今シーズンのWLTにかける思いや彼の強さの秘訣、そしていつも彼の背中を支えてくれた人たちの存在、さらに今回のWLTでの目標やサーファーとして目指しているところなど、今の彼の内に込められた率直な思いを聞いた。

※浜瀬海(はませ・かい) 以下: K

昨年経験した悔しい思いの末に、やっと手にしたWLTへの切符

この度はWLTクオリファイおめでとうございます!代表選手に選ばれた時の気持ちを聞かせてください。

K:今回出場した「Baler International Pro LQS」の最中に、WLTへのクオリファイが決まったのですが、正直その瞬間はまだ信じられていなかったです。試合後の最終的なトータルスコアを確認した時に、自分が本当にWLT選手として選ばれたという実感が湧いてめちゃくちゃ嬉しくなりました。

また元々、WLT自体には過去に何度か出場していたのですが、コロナ禍に入った頃にアジアリージョンのQSが新設されてからは、そのQS内の大会でポイントを稼がないと出場できない形になりました。それからはWLTに出られておらず去年は3番手であと一歩のところで出場資格を逃し、とても悔しい思いをしたので今年は絶対クオリファイするという強い思いで挑んできました。

WLTクオリファイを決めたBaler International Pro LQSを振り返るとどんな大会でしたか?

K:自分のライバルであるフィリピンで1番のJR(ロジェリオ・エスキベル)という選手と、もう1人の日本人選手の井上鷹は、昨年WLTに出てトップ10以内に残ったこともあり既にクオリファイしていたので、彼らがアジアリージョンツアーにいない中でポイントを稼ぐという点では比較的有利だったので自信はありました。

実際この大会はめちゃくちゃ調子が良かったです。ただJRも出ていて決勝でも戦いましたが、彼のライディングを見ると自分はまだまだだなと感じた部分もありました。彼は現在のWLTのトップ8で大きい波から小さい波まで上手く乗りこなす選手なんですが、WLTでは彼のような選手たちと対峙することになるので、そういう意味でも自分を見つめ直す良い機会にもなりました。

ご自身の今シーズンのパフォーマンスはいかがでしょうか?

K:クオリファイを決めたこの大会から帰ってきてから、ボードやギアもしっかり調整できていますし、トレーニングもしっかりできていてフィジカルも完璧な状態で、サーフィン自体も調子が良いのでこのまま怪我なく調整していければ勝てる自信はあります。

限られた環境だからこそ、自分に必要なことへ全力で取り組んできた努力の結晶が生んだ彼の強さ

他の選手と比べて自分の強みだと思う点を聞かせてください。

K:一番は体幹の強さだと思います。海外の選手はみんなもちろん強いのですが、僕も日頃トレーニングの中で特に注力して鍛えているので自信はあります。

あとは普段スクールを開いていたり、活動拠点の湘南自体があまり波がないということもあって、自分のサーフィンを自由にできる時間が十分に持てない中で、試合の時が心置きなくフリーでサーフィンできる時間だったりもするのですが、そういう限られた時間の中で自分のサーフィンをしっかり発揮できる爆発力も強みだと思っています。

それが実現できている要素としては自分が実際にサーフィンしている時も、それ以外も常にイメージトレーニングをしていることだと思っていて、自分のパフォーマンスに大きく活かされていると感じています。

ロングボードだけではなくショートボードも乗りこなす二刀流はどう競技に活かされてますか?

K:ショートボードに乗っているとロングボードでは見られない波の使い方もあれば、見たり選んだりする波も違いますし、ターン一つにしても動き方が違うのでロングボードに活かせる部分は多いです。普段から色んなサイズや形のボードを乗っていることでサーフィンのレベルが上がっている感覚はあります。

ここぞという時に勝ち切れるメンタリティの整え方を教えてください。

K:どんな大会であっても「絶対に勝つ」という気持ちは常に持っていますし、今回の「Baler International Pro LQS」の時には「ここでWLTにクオリファイできなければもう先はない」と自分に言い聞かせていました。いつもそういう形で自分を奮い立たせて自信を付けるように意識しています。

あとは大会のレベルに関係なく、とにかく自分の目先の1試合1試合をしっかり勝っていくことは意識していますし、サーフィンをする時はとにかく楽しくやるようにしています。

今まで数々の大会で結果を残してこれたのは何が秘訣でしょうか?

K:他の選手も見えない努力をしてきていると思いますし、僕自身も隠しているわけではないのですが、週3回はジムに通ってトレーニングをしていて、サーフィンもその合間で練習しています。このような形で日々の努力の積み重ねから生まれた自信が結果に繋がっている秘訣だと思っています。

また僕の場合、サーフィンに関してはやはり時間が取れなかったり、湘南自体潮回りがあまり良くないこともあっていつも好きな時に乗れる環境ではないので、レッスン中や自分が練習できる時間で乗れる1本1本を大切にして集中して乗るように意識しています。環境が整っていないからこそ、その時の自分に何が必要なのかをしっかり明確して一つ一つに注力しながら練習して自信を付けるようにしています。

浜瀬が思う世界最高峰の大会「WLT」が他の大会と一線を画す理由とは

WLTとはどのような大会でしょうか?

K:ロングボードの世界一大きいコンテストのツアー戦で世界最高峰の大会です。出場資格を得られる選手は22人から23人ほどで、世界中から強豪選手が集まって試合をするのですが世界最高峰ということもありとてもハイレベルなので自分にとっても刺激しかない大会になっています。

またこのツアーはシーズンで大体4~5戦あるのですが、今年は4戦で7月~10月の間で毎月1試合ずつくらいある形になります。ただ10月にエルサルバドルで行われる最終戦にはシーズンのトップ8の選手しか出場できないので、まずはそこへ出場するためにしっかりトップ8に残るのが最初の目標です。

国内外で結果を残してきた浜瀬選手にとってWLTはどんな大会でしょうか?

K:世界最高峰の大会ということもあって自分の中で一番重きを置いている大会ですし、普段出場するJPSAの大会では日本人選手としかマッチアップしない一方で、WLTでは自分よりはるかに上手い外国人選手たちと戦うことになるので、試合が始まる前から心が折れないように自分を常にそのレベルに持っていくような臨み方が必要となる他の大会とは一線を画している大会です。

さらに自分の120%を出さないと勝てない大会で、少しのミスが敗因になってしまうほどレベルの高い大会なのでしっかり準備して挑みたいと思っています。また自分の現在地を把握できたり、毎回成長を感じさせてもらえる大会でもあるので、僕にとってはサーファーとして今後も挑戦し続けていく大会です。

WLTにむけて新たに準備していることはありますか?

K:僕の普段の練習環境である湘南の海は波が短い一方で、WLTが開催される海は波が長く海底もリーフなので、そういった大会と同じような環境での練習時間を増やす必要があると思い、先日もインドネシアのバリへ行ってデカい波や海底がリーフになっている長い波で練習しました。

実際の大会に近い環境で練習する中でデカい波にも乗れるようにボードも調整したり、今までやって来なかったことも今年は取り組んでいますし、WLTはこれまでの大会とは次元が違って、いつも通りの練習方法やボード設定では敵わないレベルになるので完璧な状態で挑めるように準備しているところです。

応援してくれている人たちと世界へ挑戦したい

家族、コーチ、スポンサー、ファンなど応援してくれる存在について聞かせてください。

K:一番は自分のパワーの源になっていますし、こういった方々の存在のおかげで自分ももっと頑張ろうという思いになれています。また友達やスポンサーのプッシュがなくて、自分一人だったら世界を回ろうとはならなかったと思いますし、今も僕が世界を舞台に挑戦できているのは皆さんのサポートがあってこそなので本当にありがたく思っています。

今回クラウドファンディングに挑戦されるということですが、内容に詳しく聞かせていただけますか?

K:WLTの一戦一戦にとてもお金がかかってしまうことから、僕の挑戦をサポートしていただける方に資金面の支援をお願いしたいと思い、今回クラウドファンディングを行います。資金の用途としては自分が完璧な状態で試合に挑めるように前もって現地入りし、大会会場と同じスポットで練習して調整するための遠征費用として活用させていただきます。

目標設定金額は300万円で考えていて、リターンとしては普段行っているレッスンや、自分が今年から始めたオリジナルフィンブランドのプロダクト、あとはビラボンと一緒に作るオリジナルTシャツやキャップなどを準備しています。

クラウドファンディングの詳細はおってご報告させていただきます!

どうして今回クラウドファンディングをしようと思ったのでしょうか?経緯と想いを聞かせてください。

K:正直最初はやろうとは思っていなかったんですが、同じロングボードの選手が去年やっていたり、友人が親身になって考えてくれた上で勧めてくれたりと、応援してくれている人たちが背中を押してくれたのでクラウドファンディングをすることを決めました。もちろん僕の活躍を期待してサポートしてくださる方がこのクラウドファンディングに賛同してくれると思うので、皆さまがサポートしてくれた分しっかりトップ8に残って結果でお返ししたいと思っています。

日本のロングボード界を牽引する彼が目指す今後の目標と夢

今シーズンのWLTシリーズで目指していることは何でしょうか?

K:まず今シーズンでしっかりトップ8に残り、翌年のWLT出場資格を確保することが目標ですが、最終的にはワールドチャンピオンも獲りたいと思っています。実際に今まで日本人の最高位はトップ10でWLTの最終戦に出場した日本人選手もまだいないので、最終戦に出場するのも今シーズンの目標です。

サーファーとして今後の目標と夢を聞かせてください。

K:選手としての最終的な目標の一つとしては、もし4年後のロス五輪にロングボードが正式種目に採用された時に日本代表として出場することなのでそこまではまず頑張りたいと思っています。そういう意味でもまだ自分が若いうちにできることは挑戦していきたいと思っていますし、今が自分のサーフィン人生で一番調子が良いと思っているので、まずは今シーズンしっかりWLTでトップ8に残ってロス五輪へ向けて道筋を作っていきたいと思っています。

1人のサーファーとしては自分のライディングを見た人たちにかっこいいと思ってもらえて、次世代のキッズサーファーとかロングボーダーが増えていくような流れになったら良いなと思っていますし、またロングボードの若手が競技を続けたくなるような環境作りに貢献して、「あの人の人生かっこいいな!」って思ってもらえる将来にできたら嬉しいです。

あとは個人的には趣味でやっているスノーボードだったりサーフィン以外にやりたいこともあるので、今まで選手として活動しているからこそできなかったことにも活動の幅を広げて挑戦していきたいと思っています。もちろんサーファーであることは競技人生後も変わりませんが、そこだけにとどまらずセカンドキャリアとしてやっていきたいことも今の活動を頑張れる原動力になっているので、サーフィンもそれ以外もパッションを持って取り組んでいきたいです。

今回のクラウドファンディングの活動を通して伝えたいことがあれば聞かせてください。

K:僕も含めて日本には世界で活躍できるくらいロングボードで上手い選手もいるのですが、金銭面はもちろんのこと海外に挑戦できる機会がなくて一歩踏み出せていない人がたくさんいます。業界としてそういう選手たちが海外へ挑戦できるきっかけを作る必要があると思いますし、世界に対しても日本にこれだけすごいサーファーたちがいるということを認知してもらいたいという思いもあります。今回の僕のクラウドファンディングを通して一般の方々にもそういった現状を知ってもらえたら良いなと思っています。

いつも応援してくれている方々へ一言お願いします。

K:ようやくWLTという世界最高峰の大会のスタート地点に立つことができたので、トップ8に入ることを目標にして世界を相手に全力で頑張りたいと思っています。これからも引き続き応援のほどどうぞよろしくお願いいたします。

浜瀬海プロフィール

1997年5月28日生まれ。神奈川県平塚市出身のプロサーファー。5歳からサーフィンをはじめ、2009年に出場した「THE SURFSKATERS」で最年少チャンピオンとなる。2012年、14歳にしてショートボードでプロデビュー。国内外のツアー(JPSA / WQS / ISA)に出場を続け、2017年にプロロングボーダーに転向。初年度でJPSAグランドチャンピオン、そしてルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。2022年〜2023年と2年連続でJPSAグランドチャンピオンとなり、迎えた2024年ではLQSで好成績を残しWLTへの出場資格を獲得した。スポンサーはBillabong、Kanaloajapan、rockdance、sidecanyon、YNSF、vonzipper、destination、freestretching、haircalifornia、futures、haircalifornia、greengravityground、Skim One、S.S.T-C 株式会社

【競技実績】
2017年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」
   「JPSAロングボード部門ルーキー・オブ・ザ・イヤー」
2018年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」
   「WSL Men’s Longboard Tour LT #2 Volte Wetsuits Men’s Pro」5位
    「WSL Rincon 50 Surf Fest」3位
2019年「2019 ASIAN SURFING CHAMPIONSHIPS」2位
   「2019 BIARRITZ FRANCE ISA WORLD LONGBOARD CHAMPIONSHIP」17位
2020年「Noosa Festival of Surfing」Mens Open,Mens Logger Proともに3位
2022年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」
2023年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」
            「Siheung Korea Open LQS」優勝
2024年「La Union International Pro LQS」2位
            「Baler International Pro LQS」2位

The post 「自分の120%を発揮しないと勝ち残れない戦い」浜瀬海が挑むのは世界最高峰の舞台WLT。 first appeared on FINEPLAY.