高校野球の発展に尽くした指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、大橋有(たもつ)さん(66)が選ばれた。東豊中(現・千里青雲)、阿武野、吹田、刀根山、茨木工科の公立5校で監督を務めたことなどが評価された。 「思って…

 高校野球の発展に尽くした指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、大橋有(たもつ)さん(66)が選ばれた。東豊中(現・千里青雲)、阿武野、吹田、刀根山、茨木工科の公立5校で監督を務めたことなどが評価された。

 「思ってもみない受賞で、大変光栄です」。再任用で勤めた吹田を2022年に退職するまで、38年にわたって指導の現場に立った。「選手ひとり一人の良さを伸ばすことを心掛けた」

 原点は教員を始めた東豊中の最初の4年間だった。自身は中学、高校、大学で野球をしたが、サッカー部の顧問になり、熱中した。生徒の要望を受けて野球部を立ち上げたが、「選手が自分で試合の流れをつかみ、次に何をすべきかを考えるサッカーの経験が、野球指導にも生きた」。

 阿武野での創部は苦労の連続だった。学校のグラウンドは他の競技が使うため、近くの工場の敷地の一部を借りた。部員たちと石を拾い、草をむしって練習できるようにした。

 刀根山の監督だった09年夏は大阪大会4回戦で大阪桐蔭と対戦した。前年夏の甲子園王者に七回まで0―2の接戦を演じた。八回に8点を奪われて敗れたが、守備では3併殺を奪った。キャッチボールにこだわり、急いでも乱れない制球を体に染み込ませた練習の成果だった。「ミスを責めず、失敗しても選手の気持ちを前向きにさせるようにした」

 12年から21年まで府高野連理事も務めた。いよいよ夏の大会を迎える選手に、心の中でエールを送る。「試合で緊張するのは、それだけ大きなものをかけてきたという証し。緊張は素晴らしいことなんだ」。この夏の大阪大会は連盟OBとして、万博記念公園野球場での運営補助にあたり、球児たちを見つめる。(渋谷正章)