髙橋藍インタビュー 後編(前編:パリ五輪予選でのピンチの裏側 石川祐希が不調も「万全になるまで自分たちが頑張らないと」>>) 男子バレーボール日本代表の若きエースのひとり、髙橋藍。主将の石川祐希と共に、福岡で行なわれるネーションズリーグ(V…

髙橋藍インタビュー 後編

(前編:パリ五輪予選でのピンチの裏側 石川祐希が不調も「万全になるまで自分たちが頑張らないと」>>)

 男子バレーボール日本代表の若きエースのひとり、髙橋藍。主将の石川祐希と共に、福岡で行なわれるネーションズリーグ(VNL)第2週から日本代表に合流し、その活躍が期待される。

 VNL開幕前の5月20日、髙橋が今秋から日本の「SVリーグ」でプレーすることが発表され、バレー界を揺るがすビッグニュースとなった。チームは、昨季のリーグ覇者であるサントリーサンバーズ大阪。10度のVリーグ優勝経験のある強豪で、兄の塁も所属する。

 昨季セリエAのモンツァをプレーオフ準優勝に導いた髙橋がSVリーグに参戦する決断に至った理由や、今年度の目標などを聞いた。



サントリーの入団会見に臨んだ髙橋藍 photo by 東京スポーツ/アフロ

【SVリーグ参戦の決め手】

――髙橋選手は東京五輪の頃、自身の課題としてブロックと前衛での攻撃を挙げていました。その次シーズンのセリエAでは、途中までフロントの攻撃がけっこう決まっていたのが分析・対策されて苦しい場面もありましたが、昨年のW杯では前衛からもガンガン決めていた印象です。そのあたりの手応えはどうでしたか?

髙橋 打点が高くなってきたこともそうですし、高いブロックに対しての打ち方を、感覚として掴めてきているのかなと思います。ですから東京五輪の頃に比べると、確実にレベルは上がっています。

 それに、ただスパイクを強く打つだけじゃなくて、ミスをしない打ち方、シャットされない打ち方も、しっかりと状況判断してできるようになりましたね。だから、前衛でのスパイク攻撃の決定率や効果率も上がっているんだと思います。

――そして、噂されてはいましたが、髙橋選手がサントリーに入団してSVリーグに参戦することが発表され、大ニュースになりました。日体大在学中からセリエAでキャリアを積み、国内のリーグでのプレーは今回が初めてになります。

髙橋藍 大学生の間にイタリアのセリエAに行ったので、もちろん日本のリーグについては知りません。ただ、これまでの「Vリーグ」から「SVリーグ」に改革されるということで、そこに興味があったことは間違いないです。自分の夢のために、「一番成長できる環境を選んでいく必要があるな」と思い、決断しました。パリ五輪を終えて、次のオリンピックに向けて環境を変えるという点でも、自分自身を強くするためにもいい環境なのかなと判断しました。

――SVリーグでは、外国人枠が1から2に増えることで、これまで以上に世界中のトップレベルの選手がたくさん日本でもプレーすることが予想されます。国内リーグのレベルの底上げも期待できますが、そのあたりも理由のひとつですか?

髙橋藍 そうですね。海外のトップ選手がたくさん来れば、日本人選手もさらにレベルアップしていくと思います。自分もそのトップ選手でありたいし、僕もイタリアリーグで3年プレーしてきて「かなり成長できたな」と実感しているので、それをSVリーグでもチームの勝利のために役立てたいです。

 それから、イタリアでプレーするなかで、日本に行きたい海外の選手がすごく多いことも感じていました。それでも(外国人枠が)1枠だからなかなか難しい......という側面もあったので、その枠がひとつ増えるだけでも、状況はかなり変わると思います。

【「ずっと尊敬している」兄・塁の存在】

――昨季のVリーグではお兄さんの塁選手が、セミファイナルとファイナルでサントリーのリリーフサーバーとして登場し、キラリと光る働きを見せました。決勝ではすごく劣勢の場面でいいサーブを入れて、相手を崩して塁選手自身がつなぎ、ブレイクにつなげましたね。ミックスゾーンで塁選手は、「高橋藍っていう化け物の弟がいますけど、お兄ちゃんも頑張ったよって胸を張って言えると思う」とコメントしていました。

髙橋 まずはチームが優勝したことが、本当にすごいと思います。あのファイナルの試合はネット配信で見ながら手に汗を握っていましたし、塁が出た場面は自分のこと以上にドキドキしたかもしれません(笑)。試合が終わったあとには、すぐ家族で連絡を取り合いました。

 僕もリリーフで出る場合があるんですけど、そこできちんと結果を出すのはなかなか難しい。そういう難しい役回りを、ファイナルという一番重要な場所で成し遂げたこと、本当に尊敬します。そこで結果を出してチームを勝利に導いたことで、塁の強さが証明できたことが僕もうれしい。刺激を受け受けましたし、僕もセリエAのプレーオフを戦う際に、あのプレーに励まされました。

――もともと、バレーを始めたのも塁選手の影響でしたね。

髙橋 塁とは子どもの頃から一緒にバレーをやってきて、ずっと尊敬しています。あのファイナルでも、リリーフサーブだけでなくてつなぎも全力でやって、流れをチームに持ってきた。その強さも、すごいなって。その塁とチームメイトとして、SVリーグに挑めるのもうれしいですね。

――SVリーグ、サントリーでの目標はもちろん優勝でしょうけど、それを含めてご自身がどこを目指していますか?

髙橋藍 SVリーグが今後どうなっていくのか、今はわからないですけど、僕ができるのはベストを尽くすこと。そのなかで自分自身が強くなって、SVリーグを戦いながら成長していくことが一番です。

 また、僕がSVリーグでプレーすることで、日本代表で僕やほかの選手たちを知ってくださったファンの方々に、日本の国内リーグのことも知ってもらえる機会になるといいかなと思います。日本のバレーボールの面白さを世界の人に知ってもらいたいですし、もちろん国内のファンや子供たちにも、もっと日本のリーグを見てもらいたい。

 僕はまだ国内リーグでのプレー経験がないので、初めての環境になりますけど、しっかり自分のやるべきことを見定めて、自分の目標のため、夢のために全力でやっていきたいです。サントリーさんの一員になるからには、もちろん連覇を狙います!

――現在開催中のVNLは、髙橋選手と石川選手はセリエAのプレーオフが長かったこともあり、第2週の福岡大会からの参加となります。

髙橋藍 それが許されるのも、昨年に出場権を獲得できたからこそです。帰国後は実家にも帰って、塁と旅行に行ったりもしました。リフレッシュできたので、また新しい気持ちで代表でもプレーすることができると思います。

 VNLも、できる限り勝ちにこだわっていきたい。そしてパリ五輪に向けていい準備をして、必ずメダルを勝ち取ります。このチームなら絶対に取れる。そういう確信があります。まずはVNL福岡大会で、みなさんの前でプレーすることを楽しみにしています。

【プロフィール】
髙橋藍(たかはし・らん)

2001年9月2日、京都府生まれ。兄の髙橋塁の影響で小学校2年生よりバレーボールをはじめる。東山高校3年生時にはエースとして国体、春の高校バレーで優勝し、2020に日本代表初選出。2021年の東京五輪では全試合にスタメン出場し、男子バレー29年ぶりの決勝トーナメント進出に貢献した。日本体育大学に在学しながらイタリア・セリエAのパッラヴォーロ・パドヴァで2シーズンプレーし、2023-24はヴェロ・バレー・モンツァで活躍。チームをプレーオフ決勝まで導いた。シーズン終了後、兄が所属するサントリーサンバーズ大阪への移籍、SVリーグへの参戦を発表した。