UCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレース、ツール・ド・熊野の最終ステージは、前日の山岳から海の街へと舞台を移し、太地半島コースで5月13日に開催された舞台となるのは、和歌山県の熊野灘に突き出した太地町。大会ではおなじみのステージ…

UCI(世界自転車競技連合)認定の国際ステージレース、ツール・ド・熊野の最終ステージは、前日の山岳から海の街へと舞台を移し、太地半島コースで5月13日に開催された

舞台となるのは、和歌山県の熊野灘に突き出した太地町。大会ではおなじみのステージだが、コースは新たに刷新され、太地湾に面し、太地半島を大きく使うルートとなった。コースは1周10.5km。太地港からの登り坂や、太地小学校前では、急な下りのヘアピンカーブなど、変化に富んだコースとなり、ここまでの疲労がたまった選手たちの力を試すステージになる。この周回コースを10周する、104.3kmのレースが設定された。





変化に富んだコースが用意された太地半島コース

個人総合成績では、第2ステージ終了時点で、首位の岡篤志(JCLチーム右京)から9秒以内に16名がひしめきあっている。このステージにはボーナスタイムが設けられており、挽回のチャンスは、フィニッシュのタイム差だけでない。2周回終了時と4周回終了時のコントロールラインに設定されたスプリントポイントの1位通過で計6秒のタイムボーナスを得られるため、たとえば、3位でフィニッシュした際に得られる4秒のタイムボーナスと合わせれば総合成績で逆転が可能なのだ。



ホワイトジャージ姿の山口瑛志(レバンテフジ静岡)、水玉ジャージ姿の小林海(マトリックスパワータグ)、イエロージャージ姿の岡篤志(JCLチーム右京)、グリーンジャージを着るジョン・カーター(キャッシュ・バークップ)が最前列に並んだ

最終ステージ、スタートライン最前列には、各賞の首位の選手がリーダージャージ姿で並んだ。ヤングライダー賞首位の山口瑛志(レバンテフジ静岡)、この日完走すれば山岳賞が確定する小林海(マトリックスパワータグ)、個人総合首位の岡、ポイント賞首位のジョン・カーター(キャッシュ・バークップ)の4名だ。
曇天の下、レースが始まった。



南国風の木々が立ち並ぶ道を行く



コースは海に迫り出した太地半島を1周する

序盤からリーダージャージを擁するJCLチーム右京が集団先頭に集まってコントロールを試みる。1回目のスプリントポイントは岡自らが1位通過し、逆転を狙うチームや選手を封じ込めて行った。



リーダーを擁するJCLチーム右京が集団をコントロール

スプリントポイントを終えた直後の5周目、過去に全日本タイトルも獲得している山本元喜(キナンレーシングチーム)、Jプロツアーを過去に何回も制しているホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)とフィンレー・ウォルシュ(キャッシュ・パー・クップ)の3名が抜け出し、先頭集団を形成、後続の集団との差を1分まで広げた。



山本元喜(キナンレーシングチーム)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)とフィンレー・ウォルシュ(キャッシュ・パー・クップ)が抜け出した



「くじらの町」太地を選手が走り抜けて行く

この中で、トリビオは総合順位で22秒差の18位につけており、このままフィニッシュすれば逆転総合優勝も可能である。

レースは後半に入っていった。岡の総合優勝を逃すわけにはいかないJCLチーム右京がメイン集団を牽引し、引き上げ、30秒程度まで両者の差が縮まった。



カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュランス)と寺田吉騎(シマノレーシング)が合流、ウォルシュが遅れて4名の集団に

7周目、カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュランス)と寺田吉騎(シマノレーシング)の2名がメイン集団から飛び出し、先頭に合流。ここからウォルシュが遅れ、新たに4名となった先頭集団は、2名のフレシュなライダーを加え、30秒前後の差を維持して走る。



逃げる4名に迫る集団

最終周回に入ると、メイン集団がペースアップし、差は縮められて行った。山本元喜が脱落し、なおも3名は逃げ続けるが、決死の集団が迫り、残り1kmを前に全員を吸収した。
レースはスプリント勝負で決されることになった。



JCLチーム右京が前方を固め、岡を守りながらペースアップする

シマノレーシングを先頭にスプリント態勢に入るが、草場啓吾が絶妙な牽引で引き上げた岡本隼(ともに愛三工業レーシングチーム)が放たれ、一気にスピードに乗せて行くと、この加速に食らいつけるものは誰もおらず、岡本は独走のままフィニッシュに飛び込んだ。加速してきた岡がするりと岡本の後ろに入り、2位でフィニッシュ。個人総合2連覇を自ら確定させた。3位にはクドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)が入っている。



牽引してきた岡本隼の勝利を確信し、手を上げる草場啓吾(ともに愛三工業レーシングチーム)



キレのあるスプリントで勝利を手にした岡本隼



優勝した岡本、2位の岡、3位のクドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)

総合2連覇を遂げた岡は「今日はチームメイトが序盤からレースをコントロールしてくれて、みんなのおかげでこのジャージを守り抜くことができました」とチームメイトへの感謝を語った。「コースも変わり、ライバルチームも強力だったので、2連覇できるとは思っていなかったのですが、チームのみんなと、応援してくださった皆さんのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」と、穏やかな笑顔で、繰り返し感謝の言葉を口にしていた。



2連覇を決め、チームメイトやファンへの感謝の思いを語る岡

岡は個人総合の連覇を果たしただけでなく、ポイント賞も首位となってレースを締めくくっている。小林はレースを完走し、山岳賞を確定させた。ヤングライダー賞は最終ステージの結果を受け、ウィリアム・ヘファナン(キャッシュ・バー・クップ)が獲得することとなった。



山岳賞首位の小林海と3位の小石祐馬(JCLチーム右京)



ポイント賞も獲得した岡



逆転でヤングライダー賞を獲得したウィリアム・ヘファナン(キャッシュ・バー・クップ)

見応えのあるレースが続いたツール・ド・熊野が閉幕。5月19日には同じくUCI認定のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」が開幕しており、熊野で善戦した選手がレースをいかに走るか、さらに注目が集まっていった。

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【結果】
ツール・ド・熊野2024 第3ステージ・太地半島(104.3km)

1/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)2時間31分43秒
2/岡篤志(JCLチーム右京)+0秒
3/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)
4/アレクサンドロス・アグロティス(マトリックスパワータグ)
5/ルーベン・アコスタ(宇都宮ブリッツェン)

【個人総合時間賞(最終)】
1/岡篤志(JCLチーム右京)8時間11分9秒
2/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)+11秒
3/山本大喜(JCLチーム右京)+14秒

【ポイント賞(最終)】
岡篤志(JCLチーム右京)50p

【山岳賞(最終)】
小林海(マトリックスパワータグ)39p

【ヤングライダー賞(最終)】
ウィリアム・ヘファナン(キャッシュ・バー・クップ)8時間12分52秒

【チーム総合時間賞(最終)】
1/JCLチーム右京 24時間34分21秒
2/マトリックスパワータグ +0秒
3/宇都宮ブリッツェン +7秒

画像:©TOUR de KUMANO 2024

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【ツール・ド・熊野2024 大会レポート】
第1ステージ・古座川清流
第2ステージ・熊野山岳