UCI(世界自転車競技連合)認定の国際レース「ツール・ド・熊野」が5月10日に開幕した。例年は5月末から6月にかけて開催されている大会だが、今年は時期を早めての開催だ。世界遺産にも登録された熊野地域や、くじらの町として知られる太地半島などを…

UCI(世界自転車競技連合)認定の国際レース「ツール・ド・熊野」が5月10日に開幕した。
例年は5月末から6月にかけて開催されている大会だが、今年は時期を早めての開催だ。世界遺産にも登録された熊野地域や、くじらの町として知られる太地半島などを走り、その唯一無二の景観の素晴らしさでも知られる大会である。

レースは3日間にわたり開催され、ステージと呼ばれる3つで構成される。それぞれのステージ勝者が表彰されるが、最大の栄誉となるのは総合成績の首位、総合優勝だ。この大会では、個人総合の首位の選手にはイエロー、山岳ポイント首位には赤い水玉、スプリントポイントやゴール成績に応じ与えられるポイントの首位にはグリーン、U23の首位の選手にはヤングライダー賞としてホワイトのジャージが首位の証として贈られる。
第1ステージは、今年初めての開催となる古座川清流周回コースでのレース。昨年は独立した大会として企画されたが、悪天候のため開催できず、今年はツール・ド・熊野に組み込んだ形でレースを開催することになった。



高さ100m、幅500mの巨岩一枚岩もコースに組み込まれた

和歌山県古座川町を流れる古座川は、美しさでも知られる清流であり、コースには同じく観光名所である「一枚岩」も組み込まれている。ここに設定された1周42.6kmの周回コースの中には、道幅が狭く起伏に富んだ山岳地帯や、道幅に変化のあるエリアも含まれ、選手たちは消耗されていくことだろう。レースは、この周回を3周する126.7kmで競われる。





アップダウンが続く第1ステージ。道幅も狭く、神経を使うコースだ

初の開催となる第1ステージは、午前9時30分スタート。
スタートラインには、16チーム94名の選手が並んだ。



選手がスタートラインに並ぶ

パレード走行ののち、リアルスタートが切られると、各チームが飛び出しを図り、積極的に動き始めた。集団を抜け出し、数名が先行する場面もあったが、長続きせずに後続の集団に吸収されていく。



平日ながら、コースには多くの観客が観戦に訪れた

飛び出しを図る選手が次々と登場するが、その度に、集団が吸収していき、勝負を決定づける動きが生じないまま、レースは進行していく。



決定的な動きがないままレースは進行していく



地元の方々の応援を受けて走る

周回内の最高標高地点に山岳賞地点が設定され、各周回、計3回の山岳賞が設定された。
この賞争いは1回目からヒートアップし、小林海(マトリックスパワータグ)とベンジャミ・プラデス(VC福岡)が競り合い、1位通過を2回決めた小林が山岳賞トップとなり、初日のレッドジャージを獲得した。



激しい山岳賞争いを見せた小林海(左・マトリックスパワータグ)とベンジャミ・プラデス(右・VC福岡)

大きな動きが生じないまま、最終周回の登坂エリアに差し掛かる。ここでマトリックスパワータグが集団先頭に集まってペースアップを始め、集団を小さくするためのふるい落としを始めた。



マトリックスパワータグのメンバーが先頭に集結、ペースアップし、疲労した選手をメイン集団からふるい落としていく

この登り区間を終えると、集団は、およそ30名までに絞りこまれていた。残り10kmを切ると、続いてはJCLチーム右京が集団前方に集まり、ペースアップを図り始める。
だが、ここからは大きな動きは生じず、勝負は集団スプリントで決される流れとなった。各チームの位置取り争いが始まり、緊張感が高まった状態で、集団での最終決戦へとなだれ込んだ。

最終コーナーは、昨年第1ステージで優勝した山本大喜(JCLチーム右京)を先頭に回り、スプリント合戦になだれ込んだ。選手がほぼ横一線に並び、フィニッシュラインに飛び込む。
僅差でハンドルを押し込んだジョン・カーター(キャッシュ・パー・クップ)が勝者となり、ガッツポーズ。昨年総合優勝した岡篤志(JCLチーム右京)が2位、3位に山本大喜が入った。



僅差の集団スプリント勝負を制したのは、ジョン・カーター(右から2番目、キャッシュ・パー・クップ)だった

カーターは、そのまま個人総合首位となると同時に、ポイント賞、ヤングライダー賞も獲得している。



優勝したカーター、2位の岡篤志、3位の山本大喜(ともにJCLチーム右京)が並ぶ表彰式



個人総合首位もカーターとなり、イエロージャージを獲得した。カーターはこのほか、グリーン、ホワイトジャージも獲得している

カーターは「ここに来られて、勝つことができて嬉しい」と率直な感想を述べた。「チームで計画していたように、それぞれの動きに対応してきた。最終的に集団スプリントになり、自分はよいポジションにいられて、勝つことができた」と冷静に振り返る。この大会は第2ステージに名物の山岳コースが開催されるが、カーターは「このジャージを守っていきたい」と意気込みを語った。



レース終了後は恒例の「餅撒き」が開催された

第2ステージは、千枚田の間を駆け上がる大会名物の厳しい熊野山岳コースが開催される。スプリントで競り勝ったカーターは、山岳コースでもジャージを守れるのか。どのような展開が待っているのだろう。

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【結果】
ツール・ド・熊野2024 第1ステージ・古座川清流(126.7km)

1/ジョン・カーター(キャッシュ・パー・クップ)2時間55分05秒
2/岡篤志(JCLチーム右京)+0秒
3/山本大喜(JCLチーム右京)
4/クドゥス・メルハウィ・ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)
5/ダニエル・グルド(レバンテフジ静岡)

【個人総合時間賞(第1ステージ終了時)】
1/ジョン・カーター(キャッシュ・パー・クップ)2時間54分55秒
2/岡篤志(JCLチーム右京)+1秒
3/山本大喜(JCLチーム右京)+6秒

【ポイント賞(第1ステージ終了時)】
ジョン・カーター(オーストラリア、キャッシュ・パー・クップ)25p

【山岳賞(第1ステージ終了時)】
小林海(マトリックスパワータグ)13p

【ヤングライダー賞(第1ステージ終了時)】
ジョン・カーター(キャッシュ・パー・クップ)2時間54分55秒

【チーム総合時間賞(第1ステージ終了時)】
1/キナンレーシングチーム 8時間45分15秒
2/JCLチーム右京 +0秒
3/マトリックスパワータグ

画像:©TOUR de KUMANO 2024