【ロベルトの血も大きなポイント】 6月2日(日)、東京競馬場で3歳以上馬によるGⅠ安田記念(芝1600m)が行なわれる。 昨年の勝ち馬ソングラインは引退したが、同2着馬で2022年のGⅠマイルチャンピオンシップ(阪神・芝1600m)を勝った…

【ロベルトの血も大きなポイント】

 6月2日(日)、東京競馬場で3歳以上馬によるGⅠ安田記念(芝1600m)が行なわれる。

 昨年の勝ち馬ソングラインは引退したが、同2着馬で2022年のGⅠマイルチャンピオンシップ(阪神・芝1600m)を勝ったセリフォス、2022年のGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)馬ジオグリフ、同年のGⅠNHKマイルC(東京・芝1600m)を勝ったダノンスコーピオン、昨年のマイルチャンピオンシップを勝ったナミュールが出走予定。さらに香港からは、GⅠ7勝の強豪ロマンチックウォリアー、今年のGⅠ香港スチュワーズカップ(シャティン・芝1600m)のヴォイッジバブルと、計6頭のGⅠ馬が名を連ねている。

 このレースを血統的視点から占っていこう。近年の安田記念の血統的傾向で目立つのが、ディープインパクト系の好成績だ。2020年はグランアレグリア、2021年はダノンキングリーとディープインパクトの直仔が勝利し、2022、23年はキズナ産駒の直系の孫ソングラインが連覇。過去を遡ると、2011年リアルインパクト、2017年サトノアラジン(いずれも父ディープインパクト)も安田記念を制している。

 今回も多数のディープインパクト系が出走を予定しているが、筆者が本命に推すのがパラレルヴィジョン(牡5歳、美浦・国枝栄厩舎)だ。



前走のダービー卿チャレンジトロフィーを勝利したパラレルヴィジョン photo by Sankei Visual

 同馬は、ソングラインと同じキズナ産駒。祖母の父シルヴァーホークはグラスワンダーの父、モーリスの父系曽祖父としても知られる血で、その父はロベルトだ。ソングラインの母の父シンボリクリスエスはロベルトの直系の孫であり、同馬とは似た血統構成となっている。

 今年のJRAのGⅠはこのロベルトの血が大きな存在感を発揮している。ステレンボッシュが桜花賞(阪神・芝1600m)、テンハッピーローズがヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)、ダノンデサイルが日本ダービー(東京・芝2400m)と、いずれも直系のエピファネイア産駒が勝利。そのほか、天皇賞・春(京都・芝3200m)を勝ったテーオーロイヤルが母系に、NHKマイルCを勝ったジャンタルマンタルが父系にその血を持っている。このうち、テンハッピーローズとダノンデサイルがこの血をクロスしている。

 安田記念とロベルトの相性も良好で、2008、09年と連覇したウオッカ(父タニノギムレット)、2012年の勝ち馬ストロングリターン(父シンボリクリスエス)、2015年の勝ち馬モーリス(父スクリーンヒーロー)がロベルトの直系だ。さらに、キズナの母の父ストームキャットも大きなポイントのひとつ。前述のダノンキングリーやサトノアラジン、2013年の勝ち馬ロードカナロアの母の父で、2018年の勝ち馬モズアスコットの母系の奥にもその名を見せる。つまりパラレルヴィジョンは、近年の安田記念勝ち馬と多くの共通点を持つ血統構成となっているのだ。

 同馬は、前走のGⅢダービー卿チャレンジトロフィー(中山・芝1600m)で重賞初制覇を果たした。GⅠ出走は今回が初めてで実績はやや乏しいが、3歳4月のデビューから2連勝したあと、なかなかオープンに上がれないながらも、デビューから8戦連続で1番人気に推されていたように高い素質を見込まれていた。

 昨秋はダートでも勝利して万能ぶりを見せたが、ついに素質開花となったのは初のマイル戦出走となった2走前のニューイヤーS(中山・芝1600m)。3、4番手から抜け出して1分32秒3の好時計で快勝した。そして前走のダービー卿チャレンジトロフィーも、完全に抜け出した2着馬エエヤンに1頭のみで襲いかかり、ゴール前鋭く伸びて差し切った。

 これでマイル戦は2戦2勝となり、東京の芝コースも3戦して2勝、3着1回と安定した走りを見せている。鞍上がクリストフ・ルメール騎手というのも心強く、3連勝で一気にGⅠを制覇することに期待する。

【牝系が超一流のロードカナロア産駒も期待】

 もう1頭はレッドモンレーヴ(牡5歳、美浦・蛯名正義厩舎)を推す。この馬は母の父がディープインパクトで、父は2013年の勝ち馬ロードカナロア。パラレルヴィジョン同様、このレースに縁のある血統構成となっている。

 牝系は超一流で、祖母がGⅠオークス(東京・芝2400m)、GⅠ天皇賞・秋(東京・芝2400m)を勝ったエアグルーヴ。また、近親にルーラーシップ、ドゥラメンテといったGⅠ馬がいる、日本を代表するファミリーの出身だ。

 レッドモンレーヴは昨年のGⅡ京王杯スプリングC(東京・芝1400m)を勝った馬だが、1600mでも3勝を挙げ、1800mでも勝利があるように距離は適性内。昨秋の富士S(東京・芝1600m)ではナミュールに次ぐ2着に入っている。昨年の安田記念は0秒6差の6着、マイルチャンピオンシップは0秒5差の9着と大きくは負けておらず、マイルチャンピオンシップでは直線で他馬に弾かれてフラつく不利もあった。

 前走の京王杯スプリングCは連覇こそならなかったものの、4角最後方から上がり3F32秒2という豪脚を繰り出し、1着との差はハナ差と勝ちに等しい内容だった。年明け4戦目だった昨年に比べ、今年は年明け3戦目と1戦少ない分の余裕もありそうで、GⅠを2戦した経験は確実に実になっているはずだ。

 以上、今年の安田記念は、キズナ産駒パラレルヴィジョン、ロードカナロア産駒レッドモンレーヴの5歳馬2頭に、GⅠ初制覇の期待をかけたい。