サンフレッチェ広島の場合、限られた戦力を効果的に使いながら戦っている印象が強い。  セレッソ大阪戦でも普段は3バックの右に入っている塩谷司がボランチでプレー。中野就斗も右CBとセンターを試合中に掛け持ちする状況だった。ミヒャエル・スキッベ…

 サンフレッチェ広島の場合、限られた戦力を効果的に使いながら戦っている印象が強い。

 セレッソ大阪戦でも普段は3バックの右に入っている塩谷司がボランチでプレー。中野就斗も右CBとセンターを試合中に掛け持ちする状況だった。ミヒャエル・スキッベ監督は選手の万能性を重視する指揮官だが、それによって高度な連携や連動性を維持しているのだ。

 とはいえ、今回のようなハードな連戦だと、どうしても選手たちは消耗してくる。26日のセレッソ大阪戦をドロー決着した後も、「いやあ、疲れました」と日本代表川村拓夢がミックスゾーンに出て来るや否や、苦笑していたのだ。

「ウチはメンバーをなかなか変えない形なので、どうしても後半の最後は落ちてしまう。僕自身、連戦の自信はあったんですけど、ケガ明けということもあって、ケガする前のコンディションに戻っていない。早くそのパフォーマンスに戻したいなと思います」と疲労困憊の表情で語っていた。

 彼が負傷離脱していた4月末から5月にかけてやや停滞感が強まって行ったが、主力が欠けると勝てないというのは昨季の広島にも見られた点。塩谷、満田誠、ピエロス・ソティリウが不在だった昨季も同様の時期があった。その傾向は今も続いているようだ。

■求められる、チーム内競争の活性化

「昨季だと、ドウグラス(・ヴィエイラ)とかエゼキエフとか途中出場の選手が結果を残して勝ったこともあったけど、今はそういうシチュエーションになっていない。そこも1つ勝ち切れない要因なのかなと思います」

 セレッソ戦で1点をマークした荒木隼人もこう指摘したが、確かにスーパーサブの不在も気がかりな点だ。ここへきてケガをしていた外国人選手が戻り、満田も最近はベンチスタートで攻撃のギアを上げる役割を託されているが、なかなか結果がついてこない。

 豪華メンバーをベンチに揃える町田、チャヴリッチを控えに回して活路を見出した鹿島ら上位陣に比べると、そこは改善しなければいけない課題ではないか。

「広島は試合に出ていない選手、メンバーに入っていない選手もすごく能力がある。今日最後に出てきた松本大弥選手なんかも、時間ときっかけがあればすぐにでもレギュラーになれる選手だと僕は感じています。そういう存在がもっと出てこないといけないのは確かです。僕自身も試合に出ていなかった2年前に1つの試合でチャンスをつかみ取って、レギュラーになれた。そういう流れをどんどん作ることが大事ですね」と川村もチーム内競争の活性化を強く求めていた。

■広島に相応しくない8位

 目下、新井や松本泰志らが前向きな流れをもたらしているが、井上愛簾、中島洋太朗ら若手含めて起爆剤になるような存在がもっともっと出てくることが望ましい。そうしないと、メンバー固定傾向の強い広島の戦い方は大きく変わらないだろう。

 いずれにしても、15試合終了時点で8位というのは、完成度の高い広島に相応しくないポジションだ。大迫敬介、塩谷、佐々木翔、荒木といった能力が高く、安定感のある守備陣を揃えるチームはそうそうない。選手個々も成長している。だからこそ、もっともっと失点数を減らし、勝負どころでゴールを奪える集団になっていくことが肝要なのだ。

 首位・町田とは12ポイント差、ACL圏内の3位・ヴィッセル神戸とも6差と厳しい状況には変わりないが、ここからいかにして浮上のきっかけをつかんでいくのか。彼らは「ここ一番でチャンスをモノにできるしたたかさ」をここから養っていくしかない。

(取材・文/元川悦子)

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