2002年日韓ワールドカップ(W杯)でルディー・フェラー監督の参謀役を務め、ドイツ代表の準優勝に貢献したミヒャエル・スキッベ監督の就任から3年目を迎えたサンフレッチェ広島。2022・2023年J1・3位と着実に完成度を引き上げており、「今…

 2002年日韓ワールドカップ(W杯)でルディー・フェラー監督の参謀役を務め、ドイツ代表の準優勝に貢献したミヒャエル・スキッベ監督の就任から3年目を迎えたサンフレッチェ広島。2022・2023年J1・3位と着実に完成度を引き上げており、「今季は優勝候補の一角」と見る向きも少なくなかった。

 実際、新本拠地・エディオンピースウイング広島初の公式戦となった2月23日の今季J1開幕・浦和レッズ戦で2-0と完勝。そこから11戦無敗と堅調な戦いを見せ、期待値も上がっていた。

 しかしながら、5月に入るとアルビレックス新潟戦のドローを皮切りに、名古屋グランパス鹿島アントラーズに連敗。京都サンガには5-0と圧勝したものの、14試合終了時点で8位まで順位を下げてしまった。消化試合数が町田ゼルビアや鹿島より1試合少ないものの、勝ち点21というのはいただけない結果。5月26日のアウェー・セレッソ大阪戦は何としても勝ち点3がほしかった。

 週中22日のYBCルヴァンカップ東京ヴェルディ戦も消化した彼らにとって、このゲームはアウェー3連戦のラスト。スキッベ監督は東京V戦も主力をズラリと並べたため、主力は休みなしのフル稼働となった。

■逃した得点機

 それだけに、早いうちに勝負を決めてしまいたい気持ちは強かったはず。立ち上がりの広島は主導権を握り、得意のサイド攻撃で相手を攻略。特に右ウイングバック(WB)の新井直人の推進力が光った。前半のCK8本という数字を見ても分かる通り、外からの攻めは大いに迫力が感じられた。

 だからこそ、流れの中から1点がほしかったが、前半40分の大橋祐紀の決定機など、惜しいチャンスをモノにできない。結局、スコアレスでゲームを折り返すことになった。

 迎えた後半。開始早々の8分に新井の右CKから荒木隼人が巧みなヘッドで先制。ようやく1点をリードした。直後の11分にも最近好調の松本泰志がGKキム・ジンヒョンとの1対1を迎えるが、絶好の得点機を逃してしまった。

 さらに新井、佐々木翔らも立て続けにチャンスで決めきれず、逆にリスタートから西尾隆矢に同点弾を食らってしまう。これは非常に痛かった。広島の試合運びのまずさを印象付ける時間帯だった。

 そこから連戦による疲労が濃くなり、終盤は相手の猛攻を封じることに忙殺されてしまう。最終的には1-1のドロー。この結果で終わるのが精一杯というしかなかった。

■加藤が話す「一番足りないところ」

「70分くらいまでは自分たちの方がいい内容だった。勝ち切れないのはチャンスをモノにできていないことが大きい。そして何もないところから失点してしまう。それで思うようにポイントを積めていない」とスキッベ監督は厳しい表情を浮かべていたが、まさにそれが広島の現状だ。チーム完成度は決して低くないのに、勝ち星が遠い…。それは指揮官にとっても大きなストレスに違いない。

「今の僕らは点を取らなくちゃいけない場面で取れなかったりしている。今日も得点後に大チャンスがあったし、そこで取れていたら楽な展開になっていた。それが一番足りないところ」と主軸FWの加藤も反省しきりだった。

 15試合終了時点で広島は引き分けが8もある。それは東京Vに次ぐリーグ2位だ。総得点26・総失点15という数字自体は町田や鹿島とそう変わらないが、それだけ効率の悪い戦いをしているということになる。

 3月に加入した新井のブレイク、ピエロス・ソティリウら外国人選手の復帰などいい材料もあるだけに、それをいち早く生かし、上位との差を詰めていかなければならない。今がまさに彼らの正念場と言っていい。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

いま一番読まれている記事を読む