1点をリードされて迎えたハーフタイムに、柏レイソルの井原正巳監督は選手を交代させなかった。それでも敵地Uvanceとどろきスタジアムで後半に見せたのは、シュート数で10対1とホームの川崎フロンターレを圧倒するサッカーだった。  そのなかの…

 1点をリードされて迎えたハーフタイムに、柏レイソルの井原正巳監督は選手を交代させなかった。それでも敵地Uvanceとどろきスタジアムで後半に見せたのは、シュート数で10対1とホームの川崎フロンターレを圧倒するサッカーだった。

 そのなかのひとつ、59分の直接FKからゴール前で生まれた混戦で、柏のFW木下康介に押し込まれて同点とされた川崎は、そのまま1-1で引き分けた。

「後半はなぜあのようになったのかを、チーム全体で突き詰めないといけない」

 失点直前のプレーでMF白井永地を倒しイエローカードをもらい、自陣で直接FKを与えていたMF遠野大弥は個人的に考えていた理由をこう明かした。

「自信を持ってパスを出して動く、といった部分が単純に足りなかったのと、2点目を取りに行く姿勢がまったく足りなかったのが要因だと思っています」

 腰痛で戦列を離れた間に先発を上福元直人に譲った守護神チョン・ソンリョンが、7試合ぶりに復帰した一戦の後半だけで4度もビッグセーブを連発した。

■「ビルドアップの質と、味方の配置に問題があった」

「ビルドアップのボールを奪われて、すぐに決定機を作られたシーンもあった。それをソンリョンさんが止めてくれていたから、失点はしていないんですけど」

 最少失点にとどまった展開をMF脇坂泰斗もこう振り返った。キャプテンの「ビルドアップのボールを奪われて」と、遠野の「自信を持ってパスを出して動く、といった部分が単純に足りなかった」はほぼ一致していると言っていい。

 後手に回り続けるからファウルもかさむ。遠野の直前にはDF大南拓磨もイエローカードをもらった。88分にイエローカードをもらったDF佐々木旭は、6月2日の名古屋グランパスとの次節が累積警告で出場停止になった。脇坂が続ける。

「後ろからのビルドアップの質と、味方の配置に問題があったと思う。1人で対応している場面で別の選手がプレスバックする、といった動きまだまだ足りない。後半のように相手に前向きでプレスさせないためには、もっと相手陣内でプレーした方がいいと考えていますけど、それを味方にうまく伝えるというか、伝えてはいますけど、それを実行するにはどうしたらいいか、を考え続けていかないといけない」

■「ボールを持てている、という認識はない」

 ボール保持率で上回りながら、特に後半に入って柏に圧倒された展開を、鬼木達監督も「ボールを持てている、という認識はないですね」とこう振り返った。

「やはり敵陣でボールを握れなければ意味がない。その結果がこういった(シュート数で圧倒された)後半の数字に表れていると思っています」

 チーム全員で反攻を誓い合って臨んだ5月。J1リーグ戦の全6試合で先制しながら、結果は2勝2分け2敗だった。無得点が4試合も続いた4月よりは好転したものの、脇坂は「思った通りに勝ち点を積み重ねられなかった」と振り返る。

「6月は連戦もあるし、来週は再びホームで試合ができる。それに向けていい準備していくことが大事だと思っています」

 川崎らしさが散りばめられたファインゴールと、自信を失いかけている跡が反映された防戦一方の後半。二律背反する姿を同居させ、もがき苦しむ川崎が暫定で15位に甘んじているJ1リーグ戦は、まもなく折り返しを迎えようとしている。

(取材・文/藤江直人)

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