■チーム防御率は昨秋4.94から6.99に悪化しエラーも増加  東大は26日、東京六大学春季リーグの立大2回戦に0-5で敗れ、10戦全敗で今季全日程を終えた。1998年の春以降、53季連続最下位が決定。引き分けることもできずに全敗を喫した…

■チーム防御率は昨秋4.94から6.99に悪化しエラーも増加

 東大は26日、東京六大学春季リーグの立大2回戦に0-5で敗れ、10戦全敗で今季全日程を終えた。1998年の春以降、53季連続最下位が決定。引き分けることもできずに全敗を喫したのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い1試合総当たり制で行われた2020年春の5戦全敗以来で、“10戦全敗”となると19年秋以来9季ぶりだ。

 最終カードも立大に対し、2試合を通じて1点も取れなかった。大久保裕監督は「シーズン終盤に来て、ようやく投手陣がまとまってきたら、今度は打つ方が連続完封負け。なかなか投打がかみ合わなかった。野球は難しいですね」とため息をついた。

 主将の藤田峻也内野手(4年)は「野手に関して言えば、シーズン序盤には打力のある選手がスタメン出場して、打つことはできたけれど守ることができなかった。終盤には、守れるけれど打てないメンバーになってしまった」とチーム事情を明かし、「(攻守を)両立できるメンバーでスタメンを組まないと、勝てない。総合力アップが大事になってくると思います」と秋季リーグへ視線を向けた。

東大・主将の藤田【写真:加治屋友輝】

そもそも今季は開幕前、昨秋にリードオフマンとして打率.316をマークし初のベストナインに輝いた酒井捷外野手(3年)が、右膝を痛めて出場不能となった時点で暗雲が垂れ込めていた。

 また、昨秋の法大2回戦で2失点完投し貴重な1勝をもたらした松岡由機投手が卒業。その昨秋に7試合先発し防御率4.63と奮闘した平田康二郎投手(4年)が、今季新エースとして期待されながら防御率7.36と低迷したのは誤算だった。

 やはり投手を含めた守りを固めることが、勝利への近道であることは間違いない。東大投手陣は、1勝10敗だった昨秋、チーム防御率4.94、1試合平均6.2失点に抑えていたが、今季は同6.99、9.1失点と“炎上”。拙守も目立ち、チーム失策は昨季の16(1試合平均1.5)から18(1試合平均1.8)に増えた。

東大で監督を務める大久保裕監督【写真:加治屋友輝】

■昨秋ベストナイン受賞も故障離脱していた酒井捷が来季から復活へ

 そんな中でも、秋へ向けて光明はある。まず、今季“全休”となった酒井について、大久保監督は「治療を続けながらですが、既に走ったりするなど体を動かしています。本人が『8月初めのキャンプからちゃんと動けるようにして、秋のリーグ戦には間に合わせる』と言っているので、その予定です」と説明する。

 問題の投手陣では、平田が今季最終登板の立大1回戦で5回を3失点(自責点1)に抑え、復調の兆しを見せた。さらに、東京・国学院久我山高3年当時の2022年の選抜高校野球で全国ベスト4入りし、1浪の末に入学した左腕・松本慎之介投手(1年)が、立大1回戦にリリーフでデビュー。同2回戦でも連投し、計2イニングで無安打2四球無失点に抑え快調なスタートを切った。

 東大にこれほどの実績を持つ選手が加わるのは極めて珍しく、独特のオーラを放っている。1浪によるブランクがあったため、試運転程度の投球だったが、大久保監督は、秋の先発起用の可能性を「あります」と明言。戦力アップにつながりそうだ。

立大2回戦で2本のヒットを放った東大・大原【写真:加治屋友輝】

 そしてもう1人、今季中に新たな4番が誕生したのも好材料だ。大原海輝内野手(3年)。埼玉県随一の進学校である浦和高から1浪を経て入学した右のスラッガーは、昨年まで鳴かず飛ばずだったが、今季の明大1回戦に代打で出てリーグ戦初安打を放つと、翌日の2回戦に「5番・右翼」でスタメン出場し、5打数4安打5打点の大当たり。その後3カードで4番を張り、今季打率.333(33打数11安打)でリーグ6位タイにつけた(26日現在)。

 昨年は「最下位脱出」を目標に掲げていた東大だが、今季はあえて「優勝」に上方修正した。東京六大学の長い歴史で、唯一優勝したことがないのが他ならぬ東大だが、藤田主将は「高い目標に対して本気で頑張ることが、よい結果につながると信じて取り組んでいきたい」と語り、大風呂敷を畳むつもりはない。秋こそ他大学に一泡吹かせるつもりだ。