マラソンランナーと聞いて、どんな体格の人をイメージするでしょうか。おそらく、「細身で引き締まった身体」などと答える方が多いはず。しかしトップアスリートを除けば、ランニングを楽しむのに体格はあまり関係ないのかもしれません。 サハラ砂漠やアマ…
マラソンランナーと聞いて、どんな体格の人をイメージするでしょうか。おそらく、「細身で引き締まった身体」などと答える方が多いはず。しかしトップアスリートを除けば、ランニングを楽しむのに体格はあまり関係ないのかもしれません。
サハラ砂漠やアマゾンなど、国内外の過酷なウルトラマラソンを走破し続ける三州ツバ吉(さんしゅう・つばきち)さん。実はランナーでありながら、プロレスラーとしても活動されています。大きく鍛えられた筋肉は、長距離を走るのに向いているとは言えないでしょう。それでも、プロレスとマラソンを両立する理由とは何なのか。そして、過酷なレースの魅力とは。詳しく三州さんにお話を伺いました。
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滅多に外は走らない!? 仕事の合間にトレーニング
フルマラソンからウルトラマラソンまで、年間20〜30本ものレースに出走されているという三州さん。そのうち1/3程は、海外で開催されている超過酷なレースだと言います。となれば、やはりトレーニングはかなり距離を走っていると思われるでしょう。しかし三州さん、滅多にトレーニングで外を走ることはないそうです。
「私はスポーツジムで働いているので、トレーニングは仕事の合間にトレッドミルで行っています。とはいえ時間も限られていて、1回あたり30分程度ということがほとんど。その代わり、トレッドミルでは必ず傾斜を5度以上に設定していますね。短い時間でも、かなり鍛えられますよ」
スポーツジム以外に、ご実家である『三州屋 銀座店』でも働かれている三州さん。プロレスに向けたウエイトトレーニングも行うそうですが、“トレッドミルのみ30分”というのには驚きました。
マラソンもプロレスも“痛み”との戦い
最近は膝の怪我などからプロレスの試合数が減っており、リングに立つのは月1回程度とのこと。それでも両立を続けるのは、やはり双方に大きな魅力があるからでしょう。とはいえ、やはりプロレスラーの体格は、マラソンにデメリットもあるようです。
「ランニングがプロレスに悪い影響を与えることはありません。でも逆に、やっぱりプロレスのために鍛えた筋肉は重く、スピードが上げられないなどのデメリットはあります。昔は速く走りたいという気持ちもありましたが、今はちょっと変わりましたね。過酷なレースを除き、フルマラソンなどはゆっくり楽しみながら走るという考えになっています」
“どう走るのか”はランナーの自由。体格の違いによるデメリットはありながらも、三州さんは自分なりの走り方を見つけ、ランニングを楽しんでいることが分かります。とはいえ、何一つとしてプロレスとマラソンに共通点がないわけではありません。
「マラソンって、やっぱり走り続ければ脚などに痛みが出てくるんですよね。その痛みに耐えながら走り続けるわけですが、これはプロレスだって同じ。むしろ、プロレスの方が大きな痛みを伴います。プロレスで痛みに耐えてきた経験は、ウルトラマラソンでも十分に活かされていますよ。プロレスを思い出せば、マラソンの痛みなんて耐えられますから」
痛みを伴いながらも動き続ける、“痛みの持久力”。精神的な強さが、プロレスとマラソンでは共通して求められるということでしょう。
「マラソンもプロレスも、要するに自分の弱さと戦っているんですよね。常に『もうやめよう』なんて気持ちは湧いてきますが、それを乗り越えて走り続ける。それが楽しいから、どちらも続けているのだと思います」
確かに辛い状況であればこそ、やめる理由は山ほど頭に浮かんでくるもの。そしてプロレスはギブアップさえすれば終わりますし、マラソンもリタイアするか否かの判断は自分次第です。三州さんにとっては、どちらも“自分自身との戦い”なのでしょう。
自分の限界に挑戦し続けたい
数あるマラソン大会の中でも、敢えて過酷なレースを選び出場を続ける三州さん。最後に、そうしたレースの魅力について語っていただきました。
「2020年までに、北極マラソンに出てみたいと思っています。あと実はマラソンじゃないんですが、エベレスト登頂も目標です。とにかく私は、自分の限界に挑戦したいんですよ。想像さえできないような世界、そして辛さを体験できる。これ以上の喜びはありません。また海外レースは、日頃行くことのない場所へ行くキッカケにもなります。そこでは国を越えた交流があり、マラソンを通じた繋がりが生まれていくわけです。ほかに、バッドウォーターやスパルタスロンも出たいですし、国内でも川の道フットレースや沖縄本島1周サバイバルランなど、まだ走れていないレースがたくさん。特に制限時間の厳しいレースは、少しでも速く走れるうちに出場しておかなければと思っています」
目標レースについて話す三州さんの表情からは、想像するだけでワクワクしているのが分かりました。
「でも、どのレースだって確実に走れるとは限りません。つまり、まずエントリーを決めて、あとはできる限りの準備に取り組むわけですよね。これって過酷なレースに限った話ではなく、例えばこれからマラソンを始める人も一緒。小さいものでも、まず目標を決めてしまうことが大切なのだと思います」
目標があればこそ“やるべきこと”が見え、あとは取り組むだけという状況ができる。三州さん自身、今もその繰り返しでレースに挑戦し続けているそうです。果たして、次はどんなレースを走破するのか。プロレスラーとして、ランナーとして、三州さんの挑戦にこれからも注目していきたいと思います。
[プロフィール]三州ツバ吉(さんしゅう・つばきち)
1971年1月生まれ、東京都中央区銀座出身。プロレスラーとして活動しながら、国内外の過酷なウルトラマラソン大会に多数出場している。そのほか、フィットネスジムでボクササイズ、ピラティス、パワーヨガなどのインストラクターも務める。ニックネームは『銀座の鉄人』。
【公式ブログ】http://ameblo.jp/tsubakichisanshu[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)/“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表【HP】http://www.run-writer.com
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<Text & Photo:三河賢文>
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