明治安田J2リーグ第16節、水戸ホーリーホック(以後、水戸)対大分トリニータ(以後、大分)の試合が、ケーズデンキスタジアム水戸で行われた。  試合は、前半に大分が攻めて、後半は水戸がゲームの主導権を握る。水戸のフォーメーションは「4-4-…

 明治安田J2リーグ第16節、水戸ホーリーホック(以後、水戸)対大分トリニータ(以後、大分)の試合が、ケーズデンキスタジアム水戸で行われた。
 試合は、前半に大分が攻めて、後半は水戸がゲームの主導権を握る。水戸のフォーメーションは「4-4-2」で、中盤はボックス型を採用し、大分も「4-4-2」で、同じシステムのミラーゲームとなった。水戸は、森直樹新監督の指揮のもと、3連勝を狙ったが、大分の守備陣の踏ん張りもあって、1-1の引き分けに終わった。
 では、前編で扱った大分の先制ゴールに続いて、得点シーンを中心に、試合を分析していこう。

26分の水戸フリーキック「大崎航詩のボールが壁に」


 26分に水戸は、フリーキックのチャンスを得る。左SBの大崎航詩が蹴ったボールが、大分の壁に当たって弾かれる。そのボールを大崎が拾いに行って、右ペナルティ前にいる前田椋介へパスを送る。前田はダイレクトでファーサイドにクロスを入れる。飯泉涼矢のヘディングしたボールは、左ゴールポストの脇を抜けた。
 惜しいシーンだった。ここでは、前田がダイレクトでファーサイドにクロスを入れた点が、惜しいシュートにつながっている。大分のディフェンダーが水戸の選手につききれていないときに、前田はクロスを入れている。それにより、飯泉がフリーでヘディングできたのだ。もし、前田が横パスをしていたら、大分のディフェンダーは準備を整えていた。そうした時間を相手に与えないクロスだった。
 後半になって、森監督は安藤瑞季と久保征一郎のFW二枚を一気に交代してきた。彼らに代わって入ったのは、落合陸と寺沼星文である。
 同点の場面を作られた53分の大分の守備を見てみよう。

53分の水戸PK獲得「藤原優大が前線に縦パス」

 大分CBの藤原優大が縦パスを入れようと前線にボールを送る。水戸CHの長尾優斗が、そのボールをインターセプトする。奪ったボールを、右ペナルティエリア前にいた寺沼にパスする。ボールを受けた寺沼がドリブルしてペナルティエリア内に入ったところで、藤原が寺沼に足を引っ掛けて、ペナルティキックを与えてしまう。
 この場面ではまず、なぜ藤原が縦パスを入れたのかが理解に苦しむ。さらに、長尾にボールを取られたことを悔いて、寺沼にプレスにいったことも同様だ。
 ここは、左SBの野嶽惇也に任せて、藤原はカバーに入ればいい。ただ、CBの心理的な宿命だとも言えるし、藤原の責任感のあらわれだとも言える。
 CBにとって、縦パスをミスったり、決定的な場面を作られるシーンがあった際、どうしても「自分が守らなければいけない」という心理的な葛藤が生まれてくる。だから、一発で物事を解決しようとして、行かなくてもいいプレスに行ってしまったのである。

 藤原としては、寺沼に左にスライドして来られるのが嫌だったので、右足で中に入ってくるのを阻止しようとした。しかし、寺沼が中ではなく縦に入ってきたので、慌てて左足を出してしまった。体重が右足にかかっている分、一歩前に出るのが遅れてしまったので、左足先だけのディフェンスになってしまった。これがペナルティキックを与えた要因なのだろう。

「ポテンシャルの高い」選手が何人もいる水戸

 71分のシーン。大分の左サイドからファーサイドにいた茂平に、ロングパスが送られる。茂はペナルティエリア内にヘディングで折り返した。
 クロスを入れた際の蹴り方が右足のインスイングなので、ニアに低いボールを入れてヘディングで勝負させるのが本来の狙いだったろう。なぜなら、ゴールキーパーにとって守備するのがとても難しい角度になるからだ。茂がフリーでいるのを冷静に見て選択したのだろう。
 茂がペナルティエリア内に返したボールに、大分の選手が頭で合わせるが、タイミングが合わずにゴールエリア内にボールが浮いてくる。
 水戸の飯泉がヘディングでケアしようとしたが、ボールが相手に渡ってしまう。木本真翔が左足でダイレクトボレーを打つが、ゴールキーパーの松原修平にゴールの外に弾かれる。
 再び飯泉がクリアしようとしたが、ジャンプのタイミングが早すぎてボールに力が伝わらない。ペナルティエリアの外にボールを出さなければならない場面だった。ジャンプして右から左に首を振っているのだが、これは逆で、左から右に首を振ってヘディングしなければボールは飛ばない。もしくは、首を振らないで真っ直ぐボールを当てて行ったほうがボールは飛んだはずだ。
 水戸のスタメンを見れば、大学卒の若い選手が多く、ポテンシャルの高い選手が何人もいる。経験を積んでいけば、形になる選手たちである。しかし、プロのリーグ戦は、経験を積ませるだけの場所ではない。勝つか負けるのかの勝負がかかった場所なのだ。
 そうした自覚を選手1人ひとりが持つことが浮上のきっかけにもなってくる。監督が代わってチームの流れも変わってきているのだから、次は、選手たちがプレーでゲームの流れを作り、常に主導権を握って試合を進められることを期待する。

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