サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、日本と同じ島=アイランドに住む人だけが参加できる(?)、あまり知られていない国際スポーツ大会の話…

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、日本と同じ島=アイランドに住む人だけが参加できる(?)、あまり知られていない国際スポーツ大会の話。

■島の人々の心を浮き立たせる「村の運動会」?

 オリンピックでもワールドカップでもない。2023年7月、島の人々の心を浮き立たせたのは、世界各地の24の「島」からやってきた2194人のアスリート、そして、14種目にもわたる競技だった。そしてサッカーでは、男子はジャージーが、女子ではバミューダが優勝を飾った。ジャージーは単独最多となる4回目の「金メダル」、そしてバミューダは10年ぶり2回目の優勝だった。

 世界にはさまざまな国際スポーツ大会がある。100年近い歴史を誇る「コモンウェルスゲームズ(英連邦競技大会)」は、かつて「日の沈まない国」と言われ、世界各地に植民地をもっていた「大英帝国」の国や地域が集まる総合競技大会。日本ではほとんど報道されることはないが、1930年から4年に1度、正確にサッカーのワールドカップと同じ年に開催され、2022年のバーミンガム(英国)大会には、参加72チーム(国や地域)、20種目の競技に、5054人ものアスリートが参加した。

 だが、こうした「巨大大会」の一方で、まるで「村の運動会」のような雰囲気の「国際スポーツ大会」もある。そのひとつに、1985年にスタートし、以後2年に1度開催されて2023年で19回の歴史を積み重ねてきた「アイランドゲームズIsland Gemes」がある。英国を中心に始まり、現在では北欧や地中海、カリブ海の小さな島々も参加し、さまざまな競技を楽しんでいる。

 いわば「島々のオリンピック」とでもいうべき競技会。その名称は、もしかしたらスコットランドで1000年の歴史を持つ「村の運動会」である「ハイランドゲームズHighland Games」を、もじったものだったかもしれない。

■最新大会のホスト島は「浜名湖と同じ面積」

 最新の「アイランドゲームズ」2023年大会の「ホスト」はガーンジー島。といっても、わかる人はほとんどいないだろう。白状するが、私も、グーグルマップで場所を確認し、ウィキペディアで調べて「こんなところがあったのか」と初めて知った。だいたい、「Guernsey」というスペルをどう読むのかというところからスタートしなければならなかったのである。

 ガーンジー島は「イギリス海峡」といっても、フランスのブルターニュ半島とコタンタン半島にはさまれたサンマロ湾に入りこんだところに浮かぶ「チャンネル諸島」の主要な島のひとつである。東のフランス本土コタンタン半島まではわずか50キロという近さで、8500年ほど前まではフランス本土と陸続きであったというが、今では立派な「英国領」である。というより、英国の王室が所有する「私領」なのである。

 10世紀に北フランスのノルマンディー公国の領土となり、11世紀にノルマンディー公ギョーム2世がイングランドを征服してイングランド王「ウィリアム1世」を兼ねるようになったとき以来、ガーンジー島を含むチャンネル諸島は英国王室の直轄地となったという。日本で言えば平安後期、藤原氏による「摂関政治」が惰性期を迎え、東国(関東)で源氏を代表とする武士たちが力をつけてきた頃の話である。

 ガーンジー島は面積62平方キロ。浜名湖(静岡県)とほぼ同じ広さの島というから、けっして小さくはない。主邑(最大の集落)のセイントピーターポートを中心に、約6万5000人の住民が暮らしている。しかし、この規模の島で、14競技、アスリート2000人を超す総合スポーツ大会を開催するのは並大抵のことではない。

いま一番読まれている記事を読む