ガールズケイリン期待の新人、大浦彩瑛(左)と高木萌那(右) photo by Takahashi Manabu【手ごたえを掴んだ高木と大浦】 3月に日本競輪選手養成所を卒業した125期(男子)と126期(女子)の選手たちがデビューする「ルー…


ガールズケイリン期待の新人、大浦彩瑛(左)と高木萌那(右)

 photo by Takahashi Manabu

【手ごたえを掴んだ高木と大浦】

 3月に日本競輪選手養成所を卒業した125期(男子)と126期(女子)の選手たちがデビューする「ルーキーシリーズ2024」。5月3日から富山競輪場でスタートしたこのルーキーシリーズは全部で4開催あるが、すでに2開催が終了している。

 当初から、ガールズケイリンでは在所成績1位で、卒業記念レースも制した仲澤春香(福井県)に注目が集まっていた。仲澤はすでに終了している2開催を走り、富山では決勝で5着となったものの、5月10日からの平塚競輪場での開催では圧巻の走りを見せて完全優勝。ここまで6戦5勝と、その強さを証明している。

 そんななかで光ったのが、富山で優勝した高木萌那(福岡県)と、富山、平塚とも決勝を走った大浦彩瑛(神奈川県)だ。

 高木は、富山での初日こそレースの流れをつかみきれず3着に終わったものの、2日目はバックストレッチで先頭に立つと、そのまま逃げ切り初勝利。3日目の決勝では第3コーナーで先頭におどり出ると、その後もスピードを落とさず2車身差をつけてフィニッシュ。初陣で初優勝を飾った。

 殊勲の高木は「初日は少し緊張してしまって、思うように動けず3着で、気持ちの面で課題が見えてしまいました。2日目と3日目は、その反省を生かして、自分のタイミングで仕掛けることができたのがよかったと思います。優勝は素直にうれしい反面、次からみなさんの期待が大きくなると思うので、その期待にしっかり応えたい気持ちはとてもあります」と語り、表情を引き締めた。


2開催とも決勝を走った大浦彩瑛

 photo by Takahashi Manabu

 大浦は、富山の初日では最終周回から一気にスピードアップして3人を抜きさり1着を獲ると、2日目はバックストレッチから高木と競り合って2着でゴールイン。3日目の決勝は最後方から追い上げて4着となった。

 続く平塚では初日は5着と調子が上がらず、2日目は失格選手もあって繰り上げで1着に。決勝では気迫のある走りを見せ、一時は4番手まで下がったものの、そこから間を割って順位を上げ2着でゴール線を通過した。

 レース後、大浦は「初日、2日目ともふがいない走りだったので、取り返したいと思っていました。決勝では、前々(前団に位置して勝負する)と宣言した通りにいけました」と充実感をにじませた。

【練習の成果を本番で発揮】

 高木は日本競輪選手養成所の入所当初から注目されていた選手のひとり。父親が現役選手の高木和仁(76期)で、祖父の工藤元司郎(16期)、曾祖父もともに元競輪選手。萌那でなんと4代目となる。まさにサラブレッドと呼ぶにふさわしい存在だ。運動能力も高く、競輪選手を目指す前に打ち込んでいた野球では、高校時代にキャッチャーとして全国優勝も経験している。

 一方、大浦は中学、高校と陸上短距離に励むが、その後、競技を続けることはなく、航空関連の企業で社会人を3年半経験。その間に結婚もしていたが、自分の好きなこと、得意なことを仕事にしたいと考え、体力に自信があり、自転車に乗ることが好きだったことから、ガールズケイリンを目指した。

 高木、大浦とも、自転車競技未経験者が受験する適性試験で日本競輪選手養成所に入所。そこでメキメキと頭角を表し、高木は在所成績3位、卒業記念レース3着の好成績を残す。大浦は在所成績8位ながら、最後の第3回記録会で200mTT、400mTT、500mTTのいずれも2位のタイムを記録。能力別S、ゴールデンキャップ獲得と、最高ランクをたたき出した。


卒業記念レースで表彰台に立った高木萌那

 写真提供:JKA

 3月上旬の卒業式後も、たゆまぬ努力を続けたふたり。高木は「(ホームバンク)久留米の先輩、小林優香さん(106期)、林真奈美さん(110期)、大久保花梨(112期)さん、枝光美奈さん(124期)と一緒に走るときには、スピードを意識した練習をしたり、バイクの後ろについて走る練習のときには、トップスピードの向上とその持続時間を意識してやっていました」と、ハイレベルの選手たちのなかで、さらなるレベルアップを図れたという。

 大浦も、ホームバンクの川崎競輪場所属の選手たちと「朝から交じって練習をして、一緒に全力疾走することによって、接近戦に少しずつ慣れることができたと思います」とレースの感覚を養うとともに、駆け引きも磨いていったという。

【将来を占うレースに】

 残すルーキーシリーズは、5月24日(金)~26日(日)の函館競輪場での開催と、5月31日(金)~6月2日(日)の松山競輪場での開催だ。高木はこの2開催に、大浦は函館の1開催に出場する。

 この開催に向けての課題について高木は「富山では誰かが動いてから私が動く感じだったので、函館では自分から動いてレースを作ったり、長い距離を踏んだりしたいです」とレース展開について語った一方で、大浦は「メンタル的なところです。富山も平塚も緊張がすごくて、そのなかで自分の走りをすることの難しさを感じました」と、まずはレースに向かう精神面を改善ポイントに挙げた。
 
 3開催目となる函館では、126期最強の仲澤も走ることになっている。3人が同時に出場するのは、1開催目の富山以来。そのときの決勝では前述のとおり、高木が勝利し、大浦が4着、仲澤が5着となった。

 残り2開催で輝くのは、競輪の血を受け継ぐ高木か、一念発起しガールズケイリンに飛び込んできた大浦か、126期トップの成績を残した仲澤か、それとも新たな逸材が登場するのか。彼女たちの将来を占う意味でも、見逃せない開催になるだろう。

【Profile】
高木萌那(たかき・もな)
2004年4月6日生まれ、福岡県出身。祖父が工藤元司郎(16期)、父が高木和仁(76期)という競輪家系で育つ。中学では軟式野球、高校では硬式野球に励み、女子野球の全国大会で捕手として優勝した経験を持つ。高校3年で競輪選手を目指し、日本競輪選手養成所に入所。卒業記念レースで3着となり、在所成績3位で卒業。5月上旬に開催された富山でのルーキーシリーズで優勝を果たす。

大浦彩瑛(おおうら・さえ)
1995年10月8日生まれ、京都府出身。中学・高校と陸上短距離競技に励み、その後は競技を続けず、社会人を経験。結婚を経て競輪選手を目指す。27歳の時に自転車競技未経験者が受験する適性試験で日本競輪選手養成所へ入所。第3回記録会では最上位ランクとなるゴールデンキャップを獲得した。富山、平塚のルーキーシリーズでともに決勝を走り、平塚では2着となった。