WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 今季のメジャー4大会が終了した。 マスターズ11位、全米オープン2位、全英オープン14位、全米プロ5位。 これが、松山英樹(25歳)の成績だ。 かつて、全盛期だった頃のタイガー・…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー4大会が終了した。

 マスターズ11位、全米オープン2位、全英オープン14位、全米プロ5位。

 これが、松山英樹(25歳)の成績だ。

 かつて、全盛期だった頃のタイガー・ウッズは、賞金王でも、ポイントレースでもない、「メジャー勝利」を毎年の目標に掲げていた。そして、ウッズはこう話していた。

「もしメジャーをひとつでも勝利できたら、その1年は大成功。素晴らしいシーズンだったと言える。しかし、もし勝てなかったとしても、ひとつひとつのメジャーでどれだけ勝てる位置で戦ったか、それがとても重要なことだ」

 その観点から言うと、メジャー初制覇はならなかったが、そのほとんどで最終日に優勝の可能性があった松山の戦いぶりは、かなり高く評価できる。素晴らしい1年だった、と言ってもいいのではないだろうか。



今季、メジャー4大会で素晴らしい戦いを見せた松山英樹(右)

 そのメジャー4大会を少し振り返ってみたい。

 第1弾のマスターズ。

 おそらく、松山にとってはメジャーの中でも特別な存在だろう。毎年、このマスターズを目指して戦っていると言っても過言ではない。

 そして今年は、松山への期待が本当に大きかった。昨年10月から年末まで、日米のトーナメントで非公式大会を含めて5戦4勝と絶好調。年が明けて2月にもフェニックス・オープンを制し、早々に米ツアー今季2勝目を挙げていたからだ。さらに、世界ランキングでもトップ5入りし、現地でもかつてないほどの注目を浴びていた。

 しかし、シーズン序盤の好調がずっと持続することはなかった。マスターズを前にして、松山の調子はやや停滞していた。そのため、松山は「昨年11月、12月のことを考えると、すごくショットの調子が落ちている。状態が悪いので自信は少ないけれども、優勝を目指してきているので(大会中に)少しでも調子が上がれば……」と、自身の復調を祈るように初日のスタートを切った。

 結果的には、強風が吹いた初日が「76」と出遅れ。2日目に巻き返したが、3日目には再びスコアを落として首位と10打差の28位と、とてもチャンスとは言えない位置で最終日を迎えることになってしまった。

 それでも、最終日には必ず伸ばしてくる――そう思ったのは、私だけではないだろう。そして実際、松山はその日のベストスコア「67」をマークして11位で終えた。

 このマスターズで、今後の松山の課題は、メジャー大会をどうやって”ピーク”で迎えることができるか、だと思った。

「それが(今の自分の)実力。調子のピークとか、谷間とかあると思うけど、ないようにやっていけたらいい」

 松山はそう語ったが、ウッズさえもメジャーにピークを合わせることは、「決して簡単ではなかった」という。すべて、メジャー直前の試合で勝利した1年もあった。

 この点については、”こうすればいい”という方程式はないため、とにかく経験を積んで、そのときが来るのを待つしかないのだろう。

 第2弾の全米オープンは、3日目を終えて首位と6打差の14位。最終日はスコアを伸ばして、逆転を狙う戦いとなった。

 その最終日、松山は「66」をマーク。マスターズの最終日と同じく、その日のベストスコアを叩き出して一気に上位へ浮上した。結局、優勝したブルックス・ケプカ(27歳/アメリカ)には及ばなかったものの、メジャー自己最高の2位という結果を残した。

「初日と3日目がよくなかったけれど、少なからずチャンスは増えてきている。次はもっと最終組に近いところで争いたい」

 松山のその願いは、続く全英オープンですぐに叶った。首位を快走するジョーダン・スピース(24歳/アメリカ)とは7打差ながら、5位という位置につけて最終日は最終組の3つ前の組でスタートした。

 マスターズ、全米オープンでのこともあって、再び最終日での爆発が大いに期待された。が、1番のティーショットでまさかのOB。トリプルボギーを叩くと、そのまま優勝争いから脱落した。

 この全英オープンでは、なぜ最終日にスコアを伸ばせなかったのだろうか? 松山はこう語った。

「朝の練習場からショットが悪かった。1番のティーショットは難しいから、とりあえずフェアウェーに置こうと思ったのに、それができなかった。その後もうまく打てなかったし、大変な1日だった。(1番の)トリプルボギーを引きずって、うまく切り替えられなかった」

 ショットの不調が原因だった。ただ、その不調の要因がどこにあるのか、技術なのか、メンタルなのか、それが課題として上がった。

 そうして迎えた今季メジャー最終戦、全米プロで好機がやってきた。

 前週の世界選手権シリーズ(WGC)ブリヂストン招待で優勝。最終日には「61」という圧巻のスコアをマークして、ショットは昇り調子にあった。そして、首位と1打差の2位で迎えた最終日、バックナインに入ったときには単独トップに立っていた。

 だが、ここで思いも寄らぬ重圧が松山を襲った。「日本ツアーを、アマチュアでやっていたときのような緊張だった」という。

 思えばメジャー大会において、これほど優勝を間近に意識する争いに加わったのは初めてかもしれない。そこでの重圧は、松山の想定をはるかに超えていたのだ。

 結果、松山は自滅に近い形で失速。最終的には”宿敵”であるジャスティン・トーマス(24歳/アメリカ)に敗れた。

 ラウンド後、猛烈な暑さの中で、松山は汗と涙を何度も何度も拭った。その挙句、松山は座り込んで涙を流した。そんな姿を見るのは初めてだった。

「このぎりぎりのところでやれるのは楽しいですし、そこで勝てればなおさら楽しいと思う。これを次に生かしていきたいけれど、(今は)何をすれば勝てるのか、わからないです……。また、一生懸命練習したいと思う」

 松山は最後に、そう声を絞り出した。

 こうしてメジャー4大会を振り返ってみると、松山にとって、なんと大きな1年だったことだろうと思う。これが、次に生かされないわけがない。

 今年のメジャーは終わったが、来年もメジャー大会はある。まずは、来年4月のマスターズ。今から、7カ月半後の舞台が楽しみでならない。