■9回に代打で同点打の慶大・渡辺憩「何かを起こそうという気持ちでした」 昨季優勝の慶大は5日、東京六大学野球春季リーグの立大2回戦に臨み、4-4で引き分けて1勝1分けとした。同点の9回に2点を奪われたが、その裏に2点を奪い返す執念のドローで…
■9回に代打で同点打の慶大・渡辺憩「何かを起こそうという気持ちでした」
昨季優勝の慶大は5日、東京六大学野球春季リーグの立大2回戦に臨み、4-4で引き分けて1勝1分けとした。同点の9回に2点を奪われたが、その裏に2点を奪い返す執念のドローで、6日に同3回戦を行う。
「(9回に奪われた)2点目が非常にキツいなと思ったところだったのですが、よく……よくというか同点となってくれました」
会見場に姿をみせた慶大・堀井哲也監督はホッとした様子だった。チームを窮地から救ったのはスーパー1年生、渡辺憩捕手だった。1点差に迫り、なおも9回2死三塁の場面で代打で登場すると、カウント2-2から立大・沖政宗投手(4年)が投じた甘く入った124キロを捉えた。強烈なゴロは三塁手の脇を抜け、左翼線へ。二塁ベースに到達した渡辺憩は一塁ベンチに向かい、右手を突き上げた。
「打席に入る前に監督から『とりあえずバットに当てれば何かが起きるから』と言われました。2ストライクに追い込まれた後でしたけど、何とか当てて、何かを起こそうという気持ちでした。嬉しい気持ちはあったんですけど、まだ同点だったので任せたぞ、という気持ちでした」
次打者が三振に倒れて同点でのゲームセットとなったが、貴重な一打は翌6日も試合を行うチームに勢いをもたらせたに違いない。渡辺憩といえば4月29日の法大3回戦で延長12回に代打でサヨナラ弾を放つ鮮烈な“六大学デビュー”で周囲の度肝を抜いていた。
選手層の厚さから出場機会は限られ、ここまで代打の2打席のみながら1本塁打を含む2安打2打点。1年生とは思えない勝負強さを発揮している。根底にあるのは昨夏に慶応高の一員として果たした甲子園優勝の経験だ。
「去年の夏、ああいう大舞台でたくさん試合をさせてもらったので、あの経験がだいぶ生きていて、大きな場面でも自分のスイングができるのは甲子園があったからだと思います」
堀井監督の神懸かり的な采配も光った。0-2の5回1死一塁で代打・権藤大外野手(3年)が右前打でチャンスを広げると、2死一、三塁から代打・福井直睦外野手(1年)が二塁強襲の適時内野安打で1点差に。続く横地広太外野手(2年)の中前適時打で一時は追いついていた。
9回に2点を奪われた後も1死から代打の今津慶介内野手(2年)が中前打で出塁。その後、権藤に代わって途中出場していた佐藤駿外野手(4年)が右中間へ三塁を放ち1点差となって、代打・渡辺憩の同点打につながっていた。
この試合、慶大は5人の代打が出場したが、そのうち4人が安打で出塁した。そのすべてが得点に絡み、堀井監督は「立教の投手陣にほとんどバッティングさせてもらえなかったので、なんとか突破口を、という気持ちでした。打った選手がすごいと思いますよ」と笑みをうかべた。さらに代打の“極意”も明かした。
「ストレートに強い、変化球に強い、右投手に強い、左投手に強いとか大まかなタイプがあるじゃないですか。プラスその時の心身の状態ですね。練習のときにしっかり見て、できるだけいい形でだしてやれるように、という感じですかね」
堀井哲也監督と静岡・韮山高時代に同級生だった立大・木村泰雄監督は「堀井監督の采配というか、代打の出すポイントも含めて、そこが最後に勝たせてもらえないことの1つかなと思います」と“脱帽”。その上で「慶応さんの底力を見せつけられたというか、最後のアウトを取るまでね……難しいですね。まず1つ勝たないと次はないので、総力上げて、最後のアウトを取って勝ちます」と切り替えて前を向いた。
堀井監督も6日の3回戦に向け「向こうは気持ちもチーム力も充実している感じを受けました。明日もいい試合になると思います」と表情を引き締めた。逃げきれなかった立大と、負け寸前から追いついた慶大--。日付が変わり、流れがどちらに傾くのか、注目だ。 (Full-Count 湯浅大)