■立大・木村泰雄監督が勝負をかけたスクイズ&継投策は実らず  静岡・韮山高時代に同級生だった慶大・堀井哲也監督と立大・木村泰雄監督が4日、東京六大学野球春季リーグ1回戦で大学の監督として初対決。大接戦の末、2-0で堀井監督率いる慶大が先勝…

■立大・木村泰雄監督が勝負をかけたスクイズ&継投策は実らず

 静岡・韮山高時代に同級生だった慶大・堀井哲也監督と立大・木村泰雄監督が4日、東京六大学野球春季リーグ1回戦で大学の監督として初対決。大接戦の末、2-0で堀井監督率いる慶大が先勝した。試合を決めたのは、NPB歴代5位の通算525本塁打を誇る清原和博氏の長男、慶大・正吾内野手(4年)の勝ち越し二塁打だった。

 勝負を懸けた作戦が裏目に出た。両チーム無得点で迎えた8回。立大が1死二、三塁のチャンスをつくると、木村監督は左打席の桑垣秀野外野手(3年)にカウント1-0からスクイズのサインを送った。しかし、落ちる変化球にバットが空を切り、飛び出した三塁走者がタッチアウトになった。

 木村監督は「(慶大先発の)外丸(東眞投手・3年)くんはランナーを出してからの投球が素晴らしかった。あの場面でも、スクイズの可能性を頭に入れた上で、バントをやりづらい球種を選んで投げてきたのでしょう。力及ばずというところです」と肩を落とした。

 立大は続く9回の守りでは、8回まで94球、6安打無失点と力投していた先発・小畠一心投手(3年)を諦め、吉野蓮投手(3年)にスイッチ。ところが吉野は1死二塁とされた後、清原に左翼フェンス直撃の勝ち越し二塁打を浴び、さらに暴投で決定的な追加点も許したのだった。

 木村監督は「小畠はよく投げてくれましたが、8回に少しつかまった感じがあったので、9回は吉野に託そうと決めました。結果的に裏目に出たというか、私の継投ミスということです」と責任を背負った。

慶應義塾大学で指揮をとる堀井哲也監督【写真:加治屋友輝】

 一方、慶大の堀井監督は9回の攻撃で、無死一塁とすると、チームトップの打率.333(4日現在)を誇る3番・水鳥遥貴内野手(4年)にあえてバントで送らせ、清原にお膳立てした。

 清原は今季全試合でスタメン4番を務めるも、試合前の時点では打率.190(21打数4安打)。6試合目のこの日に一変し、4打数3安打1打点の大活躍で応え「初めて4番の仕事を果たせました。それまで情けなかったけれど、なんとか監督の期待に応えられたのかなと思います」と胸をなでおろした。堀井監督も「4番らしく、役割を果たしてくれました」とうなずいた。指揮官の抜擢、信頼、我慢が決勝打を呼び込んだ格好だ。

今季から立大の監督を務める木村泰雄監督・右から2人目【写真:加治屋友輝】

■被災地のチームを立て直した木村監督、侍ジャパン大学代表も兼ねる堀井監督

 木村監督は1961年4月生まれの63歳、堀井監督は62年1月生まれの62歳で、韮山高時代の同級生にして野球部のチームメート。「1年生と3年生の時には、クラスも一緒でしたよ」と堀井監督は笑う。

 木村監督は立大、大昭和製紙でプレーを続け、2009年から5年間は宮城・日本製紙石巻の監督を務めた。昨年6月に立大のコーチに就任し、今季から監督に昇格した。

 堀井監督は慶大、三菱自動車川崎で外野手として活躍した後、マネジャーに転身。三菱自動車岡崎、JR東日本の監督を歴任し、2020年の春から慶大の指揮を執っている。昨年9月からは侍ジャパン大学代表の監督も兼ねている名将だ。

完封勝利を挙げた慶大・外丸【写真:加治屋友輝】

 実は2人は、2013年の都市対抗・準々決勝でも監督同士で対戦。堀井監督率いるJR東日本が4-0で、木村監督の日本製紙石巻を下している。とは言え、この時の木村監督は2年前の東日本大震災から被災地の企業チームを建て直し、創部初の都市対抗勝利を含め2勝を挙げる大健闘だった。

 木村監督が「(堀井監督は)社会人の監督の頃から、私が質問すると丁寧にアドバイスをしてくれる。昔から変わらない同級生ではあるけれど、監督としては尊敬しています」と述懐すれば、堀井監督も「(木村監督は)高校時代から中心選手で、野球選手として見習う点が多かった」と振り返り、「2人とも同じような経歴をたどってきたので、他の人にはわからない気持ちが通じるところはあります」と感慨深げだ。

 立大はこの日の敗戦で、慶大には2018年秋の3回戦以降、4引き分けを挟んで20連敗となった。友情は永遠に違いないが、木村監督は指揮官として、そろそろリベンジを果たしたいところだろう。