井上という圧倒的な強者を前に、ネリの番狂わせは起きるのか。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext 今から遡ること34年。東京ドームを彩った迫力満点のマッチメイクは波乱の展開…

井上という圧倒的な強者を前に、ネリの番狂わせは起きるのか。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 今から遡ること34年。東京ドームを彩った迫力満点のマッチメイクは波乱の展開となった。日本がバブル景気に沸き立っていた1990年2月に行われたマイク・タイソンとジェームズ・ダグラス(ともに米国)の決戦である。

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 結果は、戦前に「圧倒的優位」とみられていたタイソンが10回KO負け。そこまで37戦無敗で、連戦連勝を繰り返していた「鉄腕」の敗北は、会場にいた5万1600人はもちろん、“ボクシング本場”である米国も驚かせた。

 列島を熱狂させた日から時は立ち、東京ドームでふたたびボクシングの世界戦が実現した。ゴールデンウイーク最終日となる5月6日に行われるスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)と元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)によるタイトルマッチだ。

 この一戦も34年前と同様、あるいはそれ以上に“一方”が優位と見られている。いわば本拠地に挑戦者を招く井上である。

 26戦無敗(23KO)という圧倒的な戦績を残す井上は、スピード、パワー、そしてメンタルと様々な面でキャリアの最盛期にある。ゆえにネリが番狂わせを起こす可能性は限りなく小さいと見られている。

 無論、スポーツにおいて「絶対」はない。だが、米識者たちの間でも井上の圧倒的優位の予想は揺るぎない。米老舗専門誌『The Ring』においてリー・グローブス記者は「“ザ・モンスター”はキャリアの絶頂期にあり、とりわけホームで威力を発揮する。ネリは経験豊富かつパワフル、リスクを冒すことに自信に満ち、東京ドームでマイク・タイソンをノックアウトしたジェームス・ダグラスの偉業を再現できるかもしれない」と指摘。そのうえで、こう論じている。

「ダグラスの偉業が今でも特別なのには理由がある。それが稀だからだ。ネリはアウトボクシングもできるが、殴り合いが好む。そして、殴り合い上等で挑んだやつは、最終的にイノウエに成敗される」

 また、元世界3階級制覇王者で、英スポーツ専門局『Sky Sports』のコメンタリーを務めているデューク・マッケンジー氏は「なんにせよ、KO決着が保証される一戦だ」と断言。そして、井上の勝利を断じている。

「イノウエは左右のどちらでも強打を打てる野蛮なボディパンチャーであり、明らかな欠点もない。ネリの大逆転を演じる可能性がないわけではないが、すべてはイノウエがどういうボクシングをするかにかかっている。ネリが試合終了のゴングを聞けるかどうか」

 この期に及んで「イノウエは過大評価されている」と挑発を繰り返し、心理戦に持ち込もうとするネリに番狂わせを起こす可能性はあるのか。現時点では、やはり井上の勝利は揺るぎないように思えてならない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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