駅伝に詳しすぎるアイドル西村菜那子が語る大学駅伝のルーキー 前編青学大に入学した折田壮太は、5000mで13分34秒88のタイムを持つ photo by 日刊スポーツ/アフロ【今年の箱根駅伝は「マジか!?」の展開】"駅伝に詳しすぎるアイドル…

駅伝に詳しすぎるアイドル

西村菜那子が語る大学駅伝のルーキー 前編


青学大に入学した折田壮太は、5000mで13分34秒88のタイムを持つ photo by 日刊スポーツ/アフロ

【今年の箱根駅伝は

「マジか!?」の展開】

"駅伝に詳しすぎるアイドル"として知られる西村菜那子さんは、大学駅伝だけでなく高校駅伝のチェックも欠かさない。そこで今回は、今春に入学した各大学の注目ルーキーについて聞いた。

 本題の前に、まずは第100回箱根駅伝を振り返った。スポルティーバでの西村さんの予想では駒澤大がV候補の筆頭だったが、勝ったのは青山学院大。2区・黒田朝日が区間賞の快走で2位に浮上すると、3区・太田蒼生が駒大のスピードキング・佐藤圭汰を大逆転。その後はトップを独走して、大会新記録で7度目の総合優勝に輝いた。

「青学大がトップに立ったときは、『マジか!?』と思ったのが本音です」

 西村さんは青学大が逆転で勝つパターンも想定していた。それは、往路を駒大と「58秒差」の2位で折り返し、復路で反撃するというものだった。

「青学大は6区で30秒差まで詰めて、8区で逆転という勝ち方はあるかなと思っていましたが、往路から強かった。駒大は3区まで非常によかったんですけど、『青学大がすごすぎた』というのがシンプルな感想です。特に、3区の太田選手が速かったですね」
 
 第100回大会は青学大が完勝する形になったが、西村さんにMVPを尋ねると、意外な名前が挙がった。

「私は6区の野村昭夢選手を推したいですね。黒田選手と太田選手がすごすぎたのは、見ていたみなさんも重々承知だとは思うんですけど、往路の勢いを復路につなげて、勝負を決めたという意味では野村選手の役割が大きかったかなと思います」

 さらに、過去最高の3位に食い込んだ城西大、全日本で過去ワーストの14位から4位に急上昇した東洋大、9年ぶりにシード権を獲得した大東文化大の好走も強く印象に残っているという。

「城西大は往路を3位以内で折り返すと予想していたんですけど、復路でも順位をキープしました。山本唯翔選手がいるうちにトップスリーを獲得できてすばらしいなと思います。東洋大はシード権を逃すんじゃないかと心配していただけに、総合4位は驚きました。

 大東大は全日本で7位に入るなど勢いはありましたが、8区のピーター・ワンジル選手がまさかの区間最下位。シード圏外に弾きだされながら、9区と10区で巻き返したので、今季はさらに楽しみです」

【青学大は5000m13分台が6人も新加入】

 箱根は節目の第100回を終えたが、新時代を創造していく「ルーキー」はどこが強いのか。西村さんは、箱根王者・青学大のルーキーたちに熱視線を送っている。

「『こんなに集まっていいのか』というぐらい優秀な選手がそろいましたね。私と同学年の、東海大の黄金世代(現DeNAの館澤亨次ら2016年入学の選手たち)を思い出すような面々です」

 その言葉どおり、5000m13分台が6人という超豪華メンバーだ。なかでも、インターハイ日本人トップ&国体少年A優勝の折田壮太(須磨学園高出身)は高校歴代2位の13分28秒78、国体少年A3位の飯田翔大(出水中央高出身)は同4位の13分34秒20というタイムを持つ。ともに、近藤幸太郎(現・SGホールディングス)が保持している5000mの青学大記録(13分34秒88)を上回っている。出雲駅伝や全日本大学駅伝(の前半区間)では即戦力と言えるレベルだ。

「折田選手は昨年12月の全国高校駅伝1区で区間賞を獲得しました。インタビューさせていただいたことがあるんですけど、自分の気持ちを言語化するのが上手だなと感じました。原晋監督は『表現力がある子が欲しい』とも話しているので、青学大にぴったりな選手だなと思っています。箱根駅伝は1区を走りたいそうですが、2区や3区でも活躍できる選手ではないでしょうか。

 飯田選手は全国高校駅伝の出場はありませんが、124チームが参加した昨年の春の高校伊那駅伝では1区で区間賞。集団走が得意な選手だと思うので、大学駅伝でも1区で活躍してくれるかなと思っています」

 青学大の13分台ランナーでは、折田と同じ須磨学園高出身の福冨翔にも注目しているという。

「福冨選手は高校時代、チームメイトだった折田選手の陰に隠れていましたが、全国高校駅伝は4区で区間4位。春の高校伊那駅伝も下り基調の1区を区間4位と好走しています。箱根駅伝は6区にチャレンジしたいそうなので、小野田勇次選手(現・中央発條)のようになってくれたらうれしいですね」

 ほかにも若林宏樹(4年)の弟・良樹(洛南高出身)、黒田朝日(3年)の弟・然(玉野光南高出身)、さらに駿河台大・徳本一善監督の息子・陽(東農大二高出身)と期待の "サラブレッド"もいる。

「青学大の兄弟選手といえば中村兄弟(祐紀/住友電工・友哉/大阪ガス)が有名ですが、ふたりがタスキをつなぐことはありませんでした。もしかしたら兄弟でのタスキリレーが見られるかもしれません。それも楽しみのひとつです」

 期待のルーキーたちは早くも活躍した。4月6日の絆記録会5000mで、安島莉玖(大垣日大高出身)が13分48秒45、佐藤愛斗(小林高出身)が13分54秒93の自己ベストを叩き出している。箱根の大会新Vメンバーが7人残っている青学大。"スーパールーキーズ"の加入で、再び黄金時代を築いていくのか。

【東洋大はルーキー次第で"鉄紺軍団"復権も】

 そんな青学大に続き、注目ルーキーが多いのは東洋大だという。

「埼玉栄高出身の松井海斗選手、東洋大牛久高出身の宮崎優選手、巨摩高出身の内堀勇選手ですね。昨年11月の関東高校駅伝1区でトップスリーに入った選手がそろって入学しました。3人とも5000mで13分台のタイムを持っていますし、非常に楽しみです」

 折田が区間賞に輝いた昨年12月の全国高校駅伝1区では、松井が区間2位、宮崎が同3位に食い込んでいる。5000mの自己ベストは折田に30秒近く離されているが、ロードでの実力は高い。

「エースの松山和希選手も5年生として残留するので、今年の箱根駅伝メンバーのうち、青学大と同じ7人の経験者が残ります。昨年度は、シード権がどうかという苦しい状況だったと思うんですが、それを乗り越えました。1年生の活躍と、石田洸介選手(4年)の復活があれば、次の箱根駅伝では優勝争いが期待できると思います」

 ルーキーたちの活躍次第では、"鉄紺軍団"が来年の箱根路で青学大のライバルになるかもしれない。

(後編:大学駅伝の勢力図を変えそうなルーキーたち>>)

【プロフィール】
西村菜那子(にしむら・ななこ)

1997年8月11生まれ。長野県出身。2015年にNGT48第1期生オーディションに合格。両親の影響で箱根駅伝を見るようになり、現在は大学駅伝だけでなく、あらゆる駅伝大会に精通している。2022年9月にNGT48を卒業し、舞台など活動の幅を広げている。