専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第118回 最近、プロの世界における中学生の活躍が目覚ましいですよね。卓球の張本智和選手とか、将棋界の藤井聡太四段とか。やっぱり、何事も3歳ぐらいから始めて、泣きながら素振りを…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第118回

 最近、プロの世界における中学生の活躍が目覚ましいですよね。卓球の張本智和選手とか、将棋界の藤井聡太四段とか。やっぱり、何事も3歳ぐらいから始めて、泣きながら素振りをさせるべきですかね……って、それは卓球の福原愛ちゃんじゃないですか。

 というわけで、日本のゴルフ界にも中学生プロが登場してもいいのではないか。それこそが、世界で通用する選手の育成につながるのではないか。そんなことを、さまざまな角度から考えてみたいと思います。

(1)中学生養成施設の創設
 卓球で中学生選手が活躍できているのは、オリンピックの強化指定選手になって、専任コーチやハイレベルな練習相手がいる充実した施設、環境の中で、卓球漬けの毎日を送っているからでしょう。

 JOCエリートアカデミーという国家プロジェクトがあり、選ばれたスポーツ選手が24時間体制で練習しているのです。そうした合宿所から、学校や試合などにも行ったりするわけですから、そりゃ効果的にエクササイズできますし、さらなるレベルアップも図れますよね。

 そこに、ゴルフの選手はいるのか? というと、残念ながらいません。ゴルフは体育館でできる類(たぐい)のスポーツじゃないですから。同様の施設を作るにしても都心では厳しいでしょうから、郊外というか、どこかの地方でやってもらうしかないかもしれませんね。

 そう考えると、東北福祉大ゴルフ部の、近くに練習施設が整った寮生活は非常に効率がいいと言えるのではないでしょうか。

 かつて、大学ゴルフ部の強豪と言えば、日大ゴルフ部でした。その日大ゴルフ部に所属していた方に以前、お話を聞いたことがあるのですが、日大はキャンパスが分散しているので、週末には部員みんなで練習やラウンドを集中して行なっていたようですが、平日は個々で練習することが多かったそうです。当時、いい人材、うまい選手は集まっていたけど、練習環境は今イチだったと聞いています。

 また、息子がジュニア選手という知り合いがいますが、大変なのはその子どもたちの送迎だそうです。せっかくの土日も、ゴルフ場や練習場への送り迎えで潰れてしまいますからね。

 とにかく、ゴルフではその移動時間が無駄です。

 その無駄を省くために、日本にもゴルフ場に併設した合宿所と学校があれば、効率よく学んで、練習もできると思うんですよね。JOC主導でも、民間主導でもいいので、誰かやってもらえないでしょうか。

 小学校6年生で選抜試験を受けて、中学3年間は合宿生活でゴルフ漬け。そうしたら、中学生プロが誕生してもおかしくないと思います。

(2)世界的な視野で見た育成
 もちろん現状でも、中学生プロゴルファー誕生の可能性は大いにあります。宮里藍選手、石川遼選手は、すでに高校生でツアー優勝を飾っているわけですから。石川選手なんて、中学校を卒業して高校に入学したばかりの5月に勝利。ジュニアゴルファーが増えていることを考えれば、近い将来、中学生プロが登場してもおかしくありません。

 ただ、日本で中学生プロが誕生しても、その選手が海外ツアーで活躍できるかどうかは疑問です。

 とりわけ、男子に限って言えば、ドライバーの飛距離が300ヤード以上は飛ばないと話になりません。つまり、技術もさることながら、体作りをしっかりやらないと、海外ではまず勝てないでしょう。

 ゴルフは敏捷性、瞬発力といった運動能力以上に、判断力と強靭(じん)なメンタル、さらに圧倒的な筋力が必要となります。ジャンルで言うと、相撲や野球、アメリカンフットボールのような、体作りが必要なスポーツだと思います。

 日本人が海外で勝てない要因のひとつは、基礎体力と筋力のなさです。松山英樹選手が勝てるのは、それらを持ち合わせているからです。短いミドルホールをワンオンできるドライバーの飛距離や、グリーン上にピタッとボールを止められるアイアンの高い弾道などは、その賜物です。正確なパッティングもしかりでしょう。

 さて、そんな海外での活躍を見据えた育成環境は整えられているのか。はたまた、どうやったら国際基準の選手を育てることができるのか。

 もはや、高校のゴルフ部の合宿はワールドクラスのコースで行なうべきです。総距離にして7400ヤード、500ヤードのミドルホールを備えたコースを作って、そこでトーナメントに近い環境でラウンドしたほうがいいでしょう。

 芝生も、バミューダやティフトンなどの洋芝にして、常に実戦モードで行なう。ゴルフ場がソーラー発電所になる時代ですから、どこかの安いコースを買収して改造すれば、実現できるのではないかと思うのですが……。




いっそ、幼少期からの英才教育をやってくれるようなところはないですかね...

(3)海外留学制度の実現
 高校の合宿ゴルフすらそうそう実現できていないのに、中学校の合宿ゴルフなんて遠い話です。

 だったら、成績優秀者を海外に留学させる手もあります。テニスの錦織圭選手の活躍の陰に、ソニー創業一族のスカラシップ(奨学金=盛田ファンド)があったのは有名な話ですよね。それによって、錦織選手は13歳から18歳までアメリカのIMGアカデミーに留学しますが、留学中も毎年厳しいクリア基準があって、その審査を通らないと翌年滞在できないというものだったそうです。

 奨学金の詳細はともかく、そんなふうにして強い選手、才能のある選手は早くからアメリカに留学させて、本場レベルの実力を養わないと。ソフトバンクとか、楽天とか、儲かっている企業で、そうしたプロ選手の育成サポート事業などをやってもらうことはできないのでしょうか……。

(4)体格のいい野球選手の勧誘
 日本最強のゴルファーと言えば、ジャンボこと、尾崎将司選手です。そのジャンボさん、昔はプロ野球の選手だって知っていました?

 だから、昔から野球とゴルフの選手は仲がいいんですよ。相性もバッチリで、多くのプロ野球選手がゴルフをたしなみます。

 そんなプロ野球選手たちの、ドライバーの飛距離は半端ないです。ならば、ジャンボさんみたいに、野球選手をプロゴルファーとして育成するのはアリだと思います。すでに体もできているでしょうから、海外で戦うことを考えても理想的です。

 で、具体的にはどうするのか。強豪中学校の野球部に所属していて、将来を嘱望されながら肩やヒジを悪くしてしまった選手とか、味方のエラーで負けて野球がイヤになってしまったピッチャーとか、そういう子たちにゴルフを勧めてみるのはどうでしょうか。

「ゴルフはひとりでやるから、味方のエラーで負けることはない。全部自己責任だ。我の強いキミなら、向いているかも。たったひとりで、世界を相手に戦えて、地位も、名誉も、お金も入ってくるぞぉ~」なんて、誘ってみる。

 半分冗談ですが、半分マジです。

 だって、日本人選手が海外で勝てないのは、小柄な人が多いからです。最初からパワーのある子を探すって、あながち間違いじゃないと思うんですけど、いかがでしょうか?

 何はともあれ、日本のゴルフ界にスケールの大きな中学生プロが誕生したら、世間は大騒ぎでしょうね。そんな日が来るのを、楽しみにしたいと思います。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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