角田は日本GPで10位入賞。陣営のピットワークも見事だった(C)Getty Images

 F1は個人スポーツか団体スポーツか。エントリーリストにはマックス・フェルスタッペン、角田裕毅ら20人の選手名が躍り、個々がコース上でバトルを繰り広げるが、ワールドタイトルには選手が争うドライバーズチャンピオンシップに加え、車両の製造者が争うコンストラクターズチャンピオンシップもあり、F1各チームの技術者の技能や知恵を振り絞った戦いでもある。

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 一方でスポーツ的な要素としても団体スポーツと捉えられる面がある。4月7日に鈴鹿サーキットで行われた日本GPではRBの角田裕毅が10位入賞を果たしたが、ピットワークが大きく機能した。途中に角田を含め中団グループ5台が一斉にピットストップ。角田は5台中4番目にピットロードに入ったが、素早いタイヤ交換を功を奏し、真っ先にコースに飛び出すことができた。

 F1ではレース中にタイヤ交換が原則的に義務づけられており、ピットクルーは20人前後。4本のタイヤの脱着、ホイールナットの開け閉め、マシンのジャッキアップ、ウイングの調整する係などに分かれる。過去にはピットストップしたマシンに発進を指示するロリポップマンや、燃料給油が認められていた時代には燃料ホースを持ってノズルでチャージする担当もいた。

 ピットクルーは主にメカニックが担う。米NASCARなどではチームに雇われる外注のクルーがいるが、F1はパドックに出入りができるチームスタッフ数の上限が決まっており、レース中はメカニックが兼務する。グランプリ前日などには何度も現場のピットで練習を行う。F1でのルーティンワークだ。これまでピット作業の最短記録は昨年のカタールGPでマクラーレンが記録した1.80秒。タイヤ交換ではナットが外れなかったりするなどして大きくタイムロスすることもあり、団体スポーツとしての意味合いは濃い。

 日本GPでも角田は素早いをピット作業で送り出してくれたことに「ウェルダン(よくやった)、トップジョブ、トップジョブ」とチーム無線を通じてお礼の言葉を伝えた。レース後も「僕のチームはビットストップをうまくやっているのでそれなりの自信はあった」として自身も所定の駐車位置に完璧に駐め、ピットワークをアシストした。

 RBはこれまでレース戦略がかみあわず、レース中盤以降にペースが上がらないことが多かったが、日本GPではレッドブル、メルセデス、フェラーリ、マクラーレン、アストンマーティンのいわゆる5強に食い下がった。5強の計10台のマシンが1台もリタイアしないなかで、角田はアストンマーティンのランド・ストロールを抑えて10位でゴールし、その一角を崩すことができた。チャンピオンシップでわずか1点を加算したに過ぎないが、現状では最高の仕事を果たし、F1の世界で再評価される形になった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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