7人制ラグビー女子の日本一を決める「太陽生命ウィメンズセブンズ」(朝日新聞社後援)は6、7の両日、第1戦の北九州大会で幕を開ける。 2014年に始まったシリーズ大会だが、ミクニワールドスタジアム北九州での開催は初。地元勢として優勝を狙うの…
7人制ラグビー女子の日本一を決める「太陽生命ウィメンズセブンズ」(朝日新聞社後援)は6、7の両日、第1戦の北九州大会で幕を開ける。
2014年に始まったシリーズ大会だが、ミクニワールドスタジアム北九州での開催は初。地元勢として優勝を狙うのは、2019年創設のクラブチーム「ナナイロプリズム福岡」だ。
設立5年目。選手兼任でゼネラルマネジャー(GM)を務める女子日本代表の中村知春や、九州電力の選手だった吉岡泰一チームディレクターが有望選手を勧誘し、昇格1年目だった昨季は総合4位と躍進した。
男女ともラグビーどころの福岡だが、女子のトップ選手の受け皿はほぼなかった。そこにナナイロができたことで、本気でラグビーをやりたい選手が社会人として地元に帰ってこられるようになった。
今の所属選手の半数近くは、福岡にゆかりがある。中村は「目標とするクラブに近い形になってきました」。
クラブのトップを務める村上秀孝氏は整形外科医。医療態勢が充実していることも、トップ選手が在籍する理由の一つだ。中村は言う。「特に代表選手はケガから復帰のタイミングが重要になる。適切なメディカルのバックアップはうちの売りになっています」
パリ五輪を夏に控え、中村は年明けから代表合宿や海外遠征が続く。北九州大会は香港での国際大会と重なり、出場できない。GMとしても、週1回のオンラインミーティング以外、ナナイロには直接的に関わることが難しい状況だ。
「女子のレベルを飛躍的に高めてくれた」と感謝する太陽生命女子セブンズに出たい気持ちはもちろんある。ただ一方で「自分がいなくてもチームが回ることが大切。それぞれの役割が機能して、自立してきた」と後輩たちの成長に手応えも感じている。
「今年からがナナイロの第2章だと思っています」
ナナイロは北九州、埼玉・熊谷、三重・鈴鹿、大阪・花園の4大会のうち、少なくとも1大会での優勝を目標を掲げる。
「ミスターセブンズ」と言われた桑水流裕策ヘッドコーチが実直に戦う姿勢を浸透させ、今年からスポットコーチになった九電コーチの久木元孝成さんは多彩な攻め手を選手たちに授ける。「バランスはよくなっている」と中村はいう。
中村の心に刻まれた光景がある。
昨年の最終第4戦の花園大会。その最終戦の前に、選手だけでなく、応援に来てくれた家族も含めた大きな円陣を組んだ。
昨季主将を務めた西郷侑菜が、支えてくれた人たちへの感謝を言葉に変える。
「ここまですべてをかけて臨みたいと思えるチームに出会えたことが幸せです。お父さん、お母さん、私を育ててくれてありがとう」
知らない土地でゼロからクラブを作りあげ、多くの苦労を重ねてきた中村は、この西郷のスピーチを聞いて「すべてが報われた」と思えたという。
まもなく36歳。選手として最晩年を迎えている中村は、ナナイロを「戻りたくなる場所。家みたいな感覚がある」と表現する。
立ち上げの時、北海道バーバリアンズの創設者である田尻稲雄さん(現北海道ラグビー協会名誉会長)に相談した言葉は忘れられない。
「チームじゃなくて、クラブなんだよ。チームは限られた時間しか関わらないけど、クラブはライフステージが変わっても、一生関わる場所だから」
ナナイロをただのチームではなく、クラブにする。高い理想を現実に近づける意味でも、様々な形でサポートしてくれる地元の人たちに間近で見てもらえる北九州大会は特別なのだ。(野村周平)