3月31日に閉幕した第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は健大高崎の群馬県勢初優勝で幕を閉じた。高校野球で今春から導入された低反発の金属バットの影響により、得点や長打が…

【報徳学園-健大高崎】優勝し、アルプス席の応援団にあいさつに向かう健大高崎の選手たち=阪神甲子園球場で2024年3月31日、中川祐一撮影

 3月31日に閉幕した第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は健大高崎の群馬県勢初優勝で幕を閉じた。高校野球で今春から導入された低反発の金属バットの影響により、得点や長打が減少して「投高打低」が顕著な大会となった。一方で、盗塁や犠打が増加して「スモールベースボール」が進み、戦術の変化がうかがえた。

 今大会の本塁打数は3本(うち1本はランニング本塁打)で、金属バットがセンバツに導入された1975年以降で大会最少となった。「柵越え本塁打」は豊川(愛知)のモイセエフ・ニキータと神村学園(鹿児島)の正林輝大の2人のみだった。

 新バットは反発性能を抑えたため、打球の平均速度、初速がともに3%以上減少するとされ、大会前から投手有利が見込まれていた。打率は2割3分3厘(前回=2割5分6厘、前々回=2割4分1厘)と下がった。得点は200で、大会記録の333(2017年)と比べると約6割にとどまった。

 前回は35試合、前々回は30試合のため単純に比較はできないが、安打数は453(前回=571、前々回=490)、二塁打は63(前回=72、前々回=80)と過去2大会より減少した。一方、三塁打は15(前回=14、前々回=13)と大きな差はなかった。

 長打が期待できない分、手堅く次の塁へ走者を進める攻撃や積極的な走塁が見られた。犠打飛は137(前回=130、前々回=126)、盗塁は72(前回=67、前々回=44)とそれぞれ増えた。エンドランに加えて、三塁走者が打球が内野ゴロになると判断した瞬間に、本塁に向けてスタートを切る「ゴロゴー」の戦術を使うチームもあった。

 第87回大会(15年)以降の集計データ(データ協力=データスタジアム)によると、二塁走者が外野へのゴロのヒットで本塁に生還した割合は48・9%となり、第88回大会(16年)の46・2%に続いて低い数値となった。近年は第90回大会(18年)の85・7%を筆頭に、60%以上の数値が続いていた。飛ばないバットに備えて、外野手が前進して守るなどポジショニングが影響したことがうかがえる。

 投手側からみると、四球の割合やストライク率、初球ストライク率にほとんど変化はなかった。長打のリスクが減ったことで、積極的にストライクを取るなどの傾向はみられなかった。【長宗拓弥】