(第96回選抜高校野球大会決勝 健大高崎3-2報徳学園) 報徳学園の三塁側アルプスは緑のバルーンを持った人たちで埋まった。 初回、2番打者・福留希空(のあ)選手(3年)が安打を放つと、卒業生で左翼手として昨春の準優勝に貢献した山増達也さん…

 (第96回選抜高校野球大会決勝 健大高崎3-2報徳学園)

 報徳学園の三塁側アルプスは緑のバルーンを持った人たちで埋まった。

 初回、2番打者・福留希空(のあ)選手(3年)が安打を放つと、卒業生で左翼手として昨春の準優勝に貢献した山増達也さん(18)は、笑顔でバルーンをたたいた。ヒットが出ず苦しんでいた福留選手を心配し、LINEでメッセージを送って励ましていたという。

 その福留選手が生還し、2点を先取。伝統の「アゲアゲホイホイ」が球場に響き渡った。山増さんは、「昨年の思いも後輩に託している。優勝してほしい」と話した。

 しかしその裏に同点に追いつかれ、三回に勝ち越された。2002年の選抜大会で優勝したメンバーの木下賢治さん(39)は「『逆転の報徳』はここから。良い守備が出ているので、焦らずチャンスをものにしてほしい」。

 1点を追う最終回は先頭打者から「アゲアゲホイホイ」の大合唱。外野席の観客も巻き込み、「もっともっとー!」とコールが起こった。

 だがあと一歩届かなかった。間木歩主将(3年)の母・佐希さん(45)は「とても良い試合だった。一人一人の努力があり、全員にありがとうと伝えたい」と涙を浮かべた。

 学生コーチを務める大阪工業大学4年、安井龍玄さん(21)も悔しさをにじませた。「これで終わりではない。夏に向けて、さらにプレッシャーに強いチームをつくっていきたい」

 コロナ禍のために夏の甲子園が中止された年の3年生だった。

 21年2月の卒業式の直後、大角健二監督に「練習を教えに来ないか」と言われた。「行きます」と即答したという。

 優勝はならなかったが、「きょう、この決勝の大舞台に立った選手たちを誇りに思います」。(原晟也、森直由、谷辺晃子)