(31日、第96回選抜高校野球大会決勝 健大高崎3―2報徳学園) 捕手で主将の箱山遥人(3年)は決めていた。先発の石垣元気(2年)を、今日は自分のリードで引っ張ると。30日の準決勝では116球を投げ、チームを決勝進出に導いたばかりだった。…

 (31日、第96回選抜高校野球大会決勝 健大高崎3―2報徳学園)

 捕手で主将の箱山遥人(3年)は決めていた。先発の石垣元気(2年)を、今日は自分のリードで引っ張ると。30日の準決勝では116球を投げ、チームを決勝進出に導いたばかりだった。

 最速150キロの直球が持ち味の石垣だが、この日の直球は140キロ前後。連投の疲れで肩の張りを訴えていた。相手はその直球を狙ってくる。箱山は、あえて初球や勝負球に120キロ台の変化球を使って、的を絞らせないように心がけた。

 一方、そうは言っても石垣の生命線はやはり直球だ。六回2死二、三塁のピンチでは決め球に直球を要求。見逃し三振を奪い、乗り切った。

 主将の箱山は今大会、石垣、佐藤の両2年生投手をリードし、打撃では4番。攻守でチームを引っ張った。だが、「なかなか勝てずに苦労ばかりだった」と振り返る。

 中学時代に日本代表の選手だったり、前チームから主力だったり。今年のチームは「歴代で一番能力がある」と青柳監督が評価するほど、力のある選手がそろっていた。しかし、昨夏、新チーム結成当初は地区のリーグ戦で敗れ、練習試合でも勝てなかった。

 なぜ勝てないのか――。選手同士でミーティングを繰り返した。「かっこよくプレーしようとするばかりで、勝ちへの執念が足りなかったこと」に気がついた。先頭に立ち、勝ちへの執念を見せると決めた。

 攻守交代の時は全力でダッシュをし、練習から人一倍前向きな声を出すようにした。スポーツの指導者の本を読んでは、勝負事への気持ちの高め方を学び、仲間に伝えた。チームは、少しずつ「勝ちへの執念」も身につけていった。

 だからこそ、星稜、報徳学園と優勝候補相手に追う展開となっても、諦めなかった。2試合とも逆転勝ちし、堂々の初優勝だ。「もっともっとレベルアップできる。必ず夏に帰ってくる」。次の目標は春夏連覇だ。(吉村駿)

■前主将はスタンドで応援

 健大高崎の前主将・森田光希さん(18)は、昨年のチームのメンバーとともにアルプス席に駆けつけた。

 決勝進出が決まった30日、主将の箱山遥人(3年)に「おめでとう」とメッセージを送ると「先輩たちあっての決勝なので。絶対に勝ちます」と返ってきたという。

 報徳学園戦は、健大高崎にとってリベンジの戦いでもあった。昨年の選抜大会の初戦で、報徳学園に2―7で敗れていたからだ。

 森田さんは「ぼうぜんとするほど、あっさり負けてしまった」と振り返る。自信があっただけに、悔しかった。相手にとっては地元での試合。後輩たちにはアウェーを感じずに実力を発揮してほしいと、声を張り上げた。

 九回は、優勝の瞬間を残そうとスマートフォンで動画を撮りながら見守った。この回から登板したエース、佐藤龍月(りゅうが)(2年)が三振を奪い優勝を決めた瞬間は、仲間たちと肩を組み、跳びはねて喜び合った。「先輩たちのリベンジを果たすと言って、本当にその通りにしてくれた。よくやってくれたと伝えたいです」(山田みう)