塁に出たら犠打で進めて、単打やスクイズで1点ずつ。緊迫した展開の中、勝利をたぐり寄せたのは、基本に忠実な野球だった。30日の第96回選抜高校野球大会準決勝、報徳学園(兵庫)は中央学院(千葉)を4―2で振り切り、2年連続の決勝進出を決めた。…

 塁に出たら犠打で進めて、単打やスクイズで1点ずつ。緊迫した展開の中、勝利をたぐり寄せたのは、基本に忠実な野球だった。30日の第96回選抜高校野球大会準決勝、報徳学園(兵庫)は中央学院(千葉)を4―2で振り切り、2年連続の決勝進出を決めた。決勝は31日午後0時半から健大高崎(群馬)と対戦し、22年ぶり3度目の優勝を目指す。昨春の雪辱まで、いよいよあと一つ――。(森直由)

 ◎…報徳学園は一回、2死二塁から斎藤の今大会4試合連続となる適時打で先制。同点に追いつかれた直後の四回には、1死二、三塁から辻本の適時打で勝ち越すと、間木のスクイズで加点した。五回も2死二塁から山岡の適時打で突き放した。先発の間木は低めの変化球がさえ無四死球の好投。2点リードの九回には2死二、三塁のピンチから継投した今朝丸が中央学院打線を抑え、逃げ切った。

■「人間力」でレギュラーつかむ レフト・辻本侑弥選手

 同点に追いつかれた直後の四回裏。報徳学園は1死二、三塁の好機を作る。

 打席に立つ8番レフト辻本侑弥選手(3年)は今大会それまで12打数1安打と、不調に陥っていた。

 「自分がだめても、次の間木が打ってくれるはず。つなぐ意識でいこう」

 4球連続で直球が来た。相手投手はフォークが得意。「次はフォークかもしれない」

 そして5球目。フォークの軌道を描く球に合わせて力強く振り抜き、右前に勝ち越しの適時打を放った。「なかなか打てず、チームに迷惑をかけてきたのでうれしかった」。試合後、笑顔がこぼれた。

 大阪桐蔭を破った準々決勝の翌29日の休養日。学校で打撃練習中、コーチから「打つ時に顔が前に突っ込んでいる」と指摘された。

 なかなかヒットが打てず、打ちたいという気持ちが強すぎて、いつの間にか打撃フォームが崩れていた。「顔の位置を変えず、軸をつくるように」と意識付けした。

 報徳学園中から高校に進み、ベンチ入りメンバーで唯一、中学時代は軟式でプレーしていた。

 レフトは昨秋、激しいレギュラー争いに。冬に重いバットを繰り返し振ったり、体重を6キロ増やしたりして「打球が強くなった」。3月上旬の練習試合では好投手から本塁打を放った。

 地道な努力を、大角健二監督は見ていた。「最後は人間力。練習態度、学業を含めしっかりやっている選手が大舞台では強い」と、レギュラーに抜擢(ばってき)された。

 この日の勝ち越し打について大角監督は「すぐに突き放し、相手に流れを渡さなかった。あの1点は大きかった」と振り返った。

 昨春の山梨学院との決勝ではスタンドから応援し、逆転負けに悔しい思いをした。

 決勝に向けて、「応援している人たちのため、リラックスして悔いのないように全力プレーをしたい。単打でつなぐ意識でヒットを打ちたい」と語った。(森直由)