(30日、第96回選抜高校野球大会準決勝 健大高崎5―4星稜) ミスを取り返すには、うってつけの場面だった。 七回、健大高崎は3―3に追いつき迎えた2死三塁の場面、3番の高山裕次郎(3年)が打席に入った。1番の斎藤銀乃助(3年)の適時三塁…

 (30日、第96回選抜高校野球大会準決勝 健大高崎5―4星稜)

 ミスを取り返すには、うってつけの場面だった。

 七回、健大高崎は3―3に追いつき迎えた2死三塁の場面、3番の高山裕次郎(3年)が打席に入った。1番の斎藤銀乃助(3年)の適時三塁打で同点になりベンチは盛り上がっていたが、高山は冷静だった。

 相手投手は外角の制球が抜群だった。「外を攻めてくる」。ベースよりに立ち、外角を狙いすます。フルカウントから外の直球を捉え、左翼線に運んだ。勝ち越しの適時二塁打となり、塁上で大きく右手を上げて喜びをあらわにした。

 この試合、先制の絶好機でミスをしていた。一回無死一、二塁で送りバントを試みたが、捕手前に転がってしまった。二塁走者が刺されただけでなく、打球をファウルと勘違いして一塁へ走らず、併殺を取られてしまった。「なぜ走らなかったのか」と動揺し、自分を責め続けていた。

 しかし、仲間たちは「大丈夫、守備で取り返せば良いから」と声をかけてくれた。そんな言葉に後押しされて、守備では無失策と貢献。自信を取り戻し、「七回の打撃につながった」。低反発バットでも長打が出せるようにと続けてきた、ネットに印を付けて狙った場所に打ち分ける練習が生きた。

 決勝進出は春夏通じて同校初。「学校の歴史を変えよう」。そう言い合ってついにここまで来た。試合後、校歌を歌いながら涙がにじんだ。優勝はもう目の前だ。(山田みう)