女子マラソンの日本記録保持者でパリ五輪の代表に内定した天満屋の前田穂南選手(27)が今月、岡山市内で今年度の活動報告会を開いた。 前田選手は五輪代表を選考する昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は7位に終わったが、今年…

 女子マラソンの日本記録保持者でパリ五輪の代表に内定した天満屋の前田穂南選手(27)が今月、岡山市内で今年度の活動報告会を開いた。

 前田選手は五輪代表を選考する昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は7位に終わったが、今年1月の大阪国際女子マラソンで2時間18分59秒で2位に入り、野口みずきさんの日本記録を19年ぶりに更新。今月10日の名古屋ウィメンズマラソンでこの記録を上回る選手が出なかったため、代表の3枠目に内定した。

 前田選手は12日にあった報告会で「MGCは不完全燃焼のまま悔しいレースになってしまったが、大阪では目標にしていた日本記録を更新でき、とてもうれしい」と総括。パリ五輪に向けては「自分の力をしっかり発揮できるよう準備をしていきたい。記録にもまた挑戦したい」と話した。(大野宏)

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 12日の報告会には指導してきた武冨豊監督(70)も同席。「2020年から23年までは苦しかったと思う」と前田選手を思いやった。

 当初20年に予定されていた東京五輪を前に「日本記録までいけるんじゃないか」と見ていたという。しかし、東京五輪はコロナ禍で1年延期になり、コースは札幌市に変更。レース前日にスタート時間の1時間前倒しが発表されるなど「選手にすごくストレスがかかる状況で、スタートラインに立つのが精いっぱいだった」と武冨監督。その後も厚底シューズへの対応にも時間がかかり、やっと順調に練習ができるようになったのは昨年5月ごろだったという。前田選手も「今までで一番苦しい期間だった」と振り返る。

 MGCに向けてはこれまで以上の練習ができ、前回優勝の立場で臨んだが、雨天など悪コンディションにもたたられ7位に。武冨監督は「連覇への気持ちが先立ち、気負いすぎたレースの入り方をしてしまったと反省していました」と明かす。

 監督によると、パリへの最後の切符を狙うレースについて、前田選手は今年3月の名古屋ウィメンズマラソンの方がいいと言っていたという。ただ、良い練習ができている感覚を大事にしよう、と1月の大阪国際女子マラソンに前倒しし、その判断が奏功した。

 最終的な内定は名古屋の結果次第に。「待つだけ」の状況に、前田選手は「早く終わってほしいな」と自宅でテレビを見ていたという。「他の選手がどんな調子なのかわからなくて。自分の記録を超えてくるかと気になったけど、後半のタイム的にどうやら無理だなと。決まってほっとしました」

 パリ五輪に向け「世界の舞台で走れることがすごく楽しみで、わくわくしています」。コースはアップダウンが激しく、暑さや石畳の路面への対応など、厳しいレースが予想される。「しっかり耐えられる脚をつくっていきたい。パリでは東京五輪の時以上の苦しみはないと思う。経験をいかして準備し、自分らしくしっかり走っていきたい」(大野宏)