(28日、第96回選抜高校野球大会準々決勝 星稜5―0阿南光) 一塁から阿南光(徳島)のエース吉岡暖(はる)の足を見ていた。 星稜(石川)の能美(のみ)誠也は4―0の四回無死から四球を選んだ。次打者はスリーバント失敗。ただ、この間に投球す…

 (28日、第96回選抜高校野球大会準々決勝 星稜5―0阿南光)

 一塁から阿南光(徳島)のエース吉岡暖(はる)の足を見ていた。

 星稜(石川)の能美(のみ)誠也は4―0の四回無死から四球を選んだ。次打者はスリーバント失敗。ただ、この間に投球する時に左足が早く動く癖に気づく。自信を持って二盗。二塁からフォークの握りが見えて、三盗も決めた。

 「吉岡投手から連打はできない」。1死三塁を作り出して中島幹大の右前安打で生還。二回途中から登板の吉岡にこの日、唯一の失点をつけた。

 星稜OBの捕手には、パワーのある山瀬慎之助(巨人)、強肩の内山壮真(ヤクルト)がいる。目標だけれど自分の持ち味は少し異なると感じている。

 瞬発力だ。中学時代、8メートル四方の線に沿って前後左右に「けんけん」で片足ごとに5周する練習を重ねた。中1で7秒4だった50メートル走は1年後に6秒5に。バネが鍛えられた。広い守備範囲と走力で、2年生ながら昨秋からマスクをかぶる。

 元日の地震のあと、金沢市の自宅に石川県七尾市から避難してきた祖父や叔母と2カ月ほどともに暮らした。そんな祖父らにも県勢として初の4強入りという吉報を届けられた。「8強の壁はわかっていたけれど過去は過去として、今できることをしようとみんなで言い合って、できた」。試合終了の瞬間、マスクを握った右手で小さくガッツポーズを作った。(内田快)

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 ○戸田慶星(けいた)(星) 被安打2、無四球で完封。「野球人生で一番良かった。絶対に(エースの)佐宗さんを投げさせたくなかったので、僕がいけるとこまでいこうという気持ちだった」

 ○山下智将監督(星) 父・智茂氏も達成しなかった県勢初の4強に「成績上は超えているのかもしれないけど、あの人を超えることは多分ずっとないと思います」。