(27日、第96回選抜高校野球大会2回戦 宇治山田商6―7中央学院) 「元エース」のプライドがあった。 3点差に迫った直後の七回、宇治山田商は4番手として中村帆高投手(3年)をマウンドへ送り出した。 「力強いピッチングで、しっかり流れを作ろ…

(27日、第96回選抜高校野球大会2回戦 宇治山田商6―7中央学院)

 「元エース」のプライドがあった。

 3点差に迫った直後の七回、宇治山田商は4番手として中村帆高投手(3年)をマウンドへ送り出した。

 「力強いピッチングで、しっかり流れを作ろう」

 185センチの長身右腕が投げ込む直球は、威力十分だった。先頭にはファウルで粘られたが遊ゴロに打ち取ると、続く2人も遊ゴロに仕留め三者凡退で抑えた。直球が走れば変化球も生きる。スライダーの切れが良く、八回も3人で抑えて味方の反撃につなげた。

 中村投手は昨秋、背番号1をつけていた。だが、安定感を欠く投球を繰り返し、逆転サヨナラ負けした豊川(愛知)との東海大会準決勝でも登板しなかった。チームは継投で勝ち上がってきたにもかかわらず、「ピンチの場面で任されないことが多くて、すごく悔しかった」と言う。

 チームの信頼を得るため、冬場は走り込みや筋力トレーニングなど体幹や足腰の鍛錬に重点を置き、体重は5キロ増えた。次第に制球力が高まり、直球も140キロ台を続けて投げられるようになった。

 エースナンバーから背番号10に変わって臨んだ甲子園。東海大福岡との1回戦は八回から救援し、2回無失点と好投した。山商にとって初の8強入りをかけたこの日は、3イニングで走者を一人も出さない文句なしの内容だった。

 でも、試合後には涙を見せた。「いいピッチングができたし自信にはなったけど、負けたのが悔しい」。村田治樹監督は「非常にナイスピッチングだった。他の投手陣と切磋琢磨(せっさたくま)して成長していってほしい」と期待を寄せた。

 次の目標はもちろん、2007年以来となる夏の甲子園出場だ。中村投手は「背番号1をつけて甲子園に帰って来たい」と力強く言った。(辻健治)

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 宇治山田商・村田治樹監督 悔しいですが、粘りながら自分たちらしいプレーもできた。スタンドからの声援が力になった。

 宇治山田商・伊藤大惺主将 序盤、守備にミスが出て受け身になってしまった。夏に戻ってきて、この悔しさを晴らしたい。