アニメのテーマ曲「残酷な天使のテーゼ」に合わせ、全身を使ってキレキレのダンスを披露する。第96回選抜高校野球大会に向けて関西入りする直前にあった、中央学院(千葉)の壮行会での一幕だ。 保護者らを前に、ステージに立ったのは、「野球部のダンス…

 アニメのテーマ曲「残酷な天使のテーゼ」に合わせ、全身を使ってキレキレのダンスを披露する。第96回選抜高校野球大会に向けて関西入りする直前にあった、中央学院(千葉)の壮行会での一幕だ。

 保護者らを前に、ステージに立ったのは、「野球部のダンス部員」の11人。クライマックスでは縦一列に並び、千手観音のように両手を広げながら、花をイメージして踊った。

 中央学院にはチームビルディングの一環として、部内に「部活」がある。

 ダンス部のほかにも、ラップ部やボイスパーカッション部、お笑い部、クッキング部、植物部、英語部、ソウマジム(ウェート)部とその数は八つにのぼる。

 発案者は相馬幸樹監督(44)で、昨夏から始めた取り組みだ。野球から離れることで、ポジション争いなどとは関係のない気軽なコミュニケーションを築こうという狙いがある。

 社会人野球までプレーした経験から「野球は1人ではできない。チーム内に支えてくれたり、相談に乗ってくれたりする人の存在があってこそ、野球がうまくなれた」と考えている。

 部員全員が何かしらの「部」に所属。オフシーズンとなる冬場は、野球の練習が週休2日になり、そのうちの1日を「部内部活」に充てることが多い。

 例えば、英語部では英検を目標に勉強し、植物部は夏にキュウリを栽培するためにビニールハウスの土を耕している。成果を示す場として、部内のクリスマス会や壮行会などがある。

■部内部活は「ポジションが違う先輩と話す機会」

 3年生の三塁手、小沢遼大はダンス部の部長として、後輩が9人いる部をまとめている。壮行会の1週間前には、野球の練習後に毎日、ダンスの練習をした。

 なかなか全員の動きが合わず、動画で撮って見直し、後輩に助言した。「野球は1人じゃできない。ダンスもみんなが合わないと成り立たない。一緒にやることで、先輩、後輩に関係なく仲良くなれる」と効果を実感する。

 下級生も部内部活を楽しんでいる。2年生の内野手、吉川凜平は「ポジションが違う先輩はあまり話す機会がないけど、ダンス部で話しやすくなった」。

 「厳しい練習だけでない楽しい部活」として、選手たちがストレスなく野球に取り組めるようになった。

 参加するのは、選手だけではない。監督の名前を冠するソウマジム部の顧問である相馬監督は、「もちろん選手と一緒にトレーニングします」。

 漫画「北斗の拳」で監督が好きな主人公ケンシロウのような屈強な肉体を目指すのが部の目標だという。選手は「少し近づけている」と話すが、監督は「まだまだですね」と笑う。

 部内部活で高めたチームワークで、20日の1回戦では春夏通じて甲子園初勝利を果たした。27日、2回戦で宇治山田商(三重)に7―6で勝ち、準々決勝進出を決めた。(大坂尚子)