(26日、第96回選抜高校野球大会2回戦 健大高崎4―0明豊) 記録は相手の「野選」だが、その1点は、紛れもなく健大高崎が機動力で奪ったものだった。 六回1死三塁で、健大高崎(群馬)の走者・佐々木貫汰は、バットにボールが当たった瞬間にスタ…

 (26日、第96回選抜高校野球大会2回戦 健大高崎4―0明豊)

 記録は相手の「野選」だが、その1点は、紛れもなく健大高崎が機動力で奪ったものだった。

 六回1死三塁で、健大高崎(群馬)の走者・佐々木貫汰は、バットにボールが当たった瞬間にスタートを切った。サインは「ゴロゴー」だ。

 相手は前進守備、しかも強い球足。ゴロを捕った明豊(大分)の二塁手の本塁送球も文句なしだった。それでも、ベースを触る佐々木の左手が一瞬早い。欲しかった追加点をもぎ取った。

 「入学してからずっとやってきた練習。こういう形でも点が取れるのは自分たちの強み」と佐々木は胸を張った。

 「機動破壊」。2012年春、徹底して足を絡める攻撃で4強入りし、一世を風靡(ふうび)した。ただ、全国の頂点には届かない。打撃にも力を入れ、21年春は選手たちの高校通算本塁打が計200本を超える強力打線で甲子園に来た。それでも、2回戦で負けた。

 以来、強打のイメージが先行するが、目指すのは打撃と走塁の「ハイブリッド」。昨秋のチーム打率は出場32校中トップの3割9分7厘だが、「機動破壊が終わったとか、やっていないんじゃないかと言われるけど、自信はあります」とは主将の箱山遥人。

 今も、アップ後すぐに始まるのは走塁練習だ。牽制(けんせい)や二盗、三盗、スライディング……。

 「ゴロゴー」の場合、リードを4メートルとり、投手がモーションに入ったらさらに1メートルほど出る。あとはいかにタイミング良くスタートするか。本塁まで3秒を切れば、健大でも相当速い。

 一回の先制点もゴロゴーで相手の野選を誘ったもの。「(ゴロゴーは)スクイズより点を取りやすい。毎日コツコツ(走塁練習を)やる、その習慣がよかった」と青柳博文監督。

 「3秒」の攻防を制した先に、7年ぶりの8強入りが待っていた。(大坂尚子)