高校野球の金属製バットの基準が今春の選抜大会から変わったことで、使われなくなった旧基準のバットを再利用する動きが出てきた。 沖縄県高校野球連盟では、リサイクルして花器などに加工して販売を開始。売り上げで高額な新基準のバットを各校に寄贈した…

 高校野球の金属製バットの基準が今春の選抜大会から変わったことで、使われなくなった旧基準のバットを再利用する動きが出てきた。

 沖縄県高校野球連盟では、リサイクルして花器などに加工して販売を開始。売り上げで高額な新基準のバットを各校に寄贈したいという。

 「沖縄県高校野球SDGs廃棄バット・アップサイクルProject」と題した活動を考えたのは、県高野連会長で嘉手納高校長の屋良淳さん(55)だ。

 きっかけは、旧基準のバットが廃棄される見通しになっていたことだった。

 県高野連には66校が加盟し、各校が旧基準のバットを20本以上保有するとみられるため、合計で約1300本が廃棄される計算になる。屋良さんは「もったいない」と頭を悩ませた。

 2022年11月ごろ、廃棄方法の確認のためにバットを切断したところ、「記念ボールホルダーに使えるかも」と思いついた。趣味のDIY(日曜大工)を生かして休日に自宅の庭などで試作品の製作を続け、花器やペン立てなどを次々と完成させた。

 23年10月ごろ、「持続可能なプロジェクトにするため、生徒を巻き込もう」と、南部工業高(八重瀬町)にバットの切断や研磨、南部農林高(豊見城市)や中部農林高(うるま市)に観葉植物の育成を頼んだ。

 今年1月から製作が本格化し、3月23日に春季大会が開催中の球場に完成した花器など約60点を並べ、初めて販売会を開いた。

 新基準の低反発バットは、打球が投手に当たるけがを防ぐなどの目的で22年2月に導入が決まった。22、23年は従来のバットの使用も認められたが、今春の選抜大会からは新基準のバットしか使えなくなった。

 新基準バットの課題は、金銭的な負担だ。屋良さんによると、旧規格のバットは2万5千円ほどだが、新基準は3万3千~4万円近くになるという。

 日本高野連などは、硬式の全加盟校に新基準のバットを配布している。沖縄県高野連では、リサイクル品の売り上げから、新基準のバットを1本でも多く学校に寄贈するほか、球児の支援に充てたいとしている。

 今後は県内の他の工業系や農業系高校にも製作に参加してもらうほか、商業系の高校にも販売促進やラベルの作成などで携わってもらいたいという。特別支援学校にも、全ての作業で協力を呼びかける予定だ。

 屋良さんは「廃棄される運命にある球児たちの思い出のバットに、リサイクル品としてもう一度命を吹き込み、青春に汗を流した確かな記憶として形に残し、これからも球児を応援し続けたい」と話している。(渡辺丘)