(25日、第96回選抜高校野球大会1回戦 常総学院1―0日本航空石川) 譲るつもりはなかった。 常総学院(茨城)は九回。1死一、三塁と一打同点のピンチに追い込まれた。1点も与えたくないと、中間守備を敷く。エース小林芯汰はカットボールで狙い…

 (25日、第96回選抜高校野球大会1回戦 常総学院1―0日本航空石川)

 譲るつもりはなかった。

 常総学院(茨城)は九回。1死一、三塁と一打同点のピンチに追い込まれた。1点も与えたくないと、中間守備を敷く。エース小林芯汰はカットボールで狙い通り、遊ゴロ併殺に打ち取った。開幕から1週間。雨で2日順延された難しい登板を完封で飾り、「守備があってこその自分のピッチング」と野手陣に感謝した。

 被災地を思って戦っていたのは、常総学院の選手も同じだった。

 チームは数日前、元日の能登半島地震で日本航空石川の地元・石川県輪島市が受けた被害を学ぶための会合を開いた。ベンチ入りした鈴木駿希の父・仁(ひとし)さんは川崎市消防局の消防士。仁さんが写真とともに、現地で救助や捜索に当たった経験を選手たちに話してくれたのだ。

 戦うのは自らも被災し、地域の思いを背負い、山梨県の系列校に移っても地道に練習に励んできた相手。主将の若林佑真は「自分たちだったら考えられない」と尊敬する。その上で、捕手の片岡陸斗は言った。「どっちが勝っても元気を与えられる試合ができれば」

 対戦が決まった時は、相手の状況を気遣って、やりづらさを感じた。だが、そう意識するのは失礼なことだと全力でぶつかった。

 無失策の好ゲーム。1点を守り切った小林は「甲子園で野球ができているだけで本当に素晴らしい。全力で楽しんでいきたい」。心の底からそう思った。(佐藤祐生)

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 ○島田直也監督(常) 「小林の投球はストライク先行で、見ていて安心できた。初戦で緊張感のある接戦を制したのは、良い力になったと思う」