甲子園はやっぱり、広い。 第96回選抜高校野球大会に32年ぶり出場の阿南光(徳島)の福田修盛(しゅうせい)選手(3年)は1回戦、打席からの光景に感嘆していた。 物心がついた頃から父章(あきら)さん(49)に言われていた通りだ。 章さんは3…

 甲子園はやっぱり、広い。

 第96回選抜高校野球大会に32年ぶり出場の阿南光(徳島)の福田修盛(しゅうせい)選手(3年)は1回戦、打席からの光景に感嘆していた。

 物心がついた頃から父章(あきら)さん(49)に言われていた通りだ。

 章さんは32年前の第64回選抜大会に、阿南光として再編統合される前の新野(あらたの)の1番打者として出場した。「打席からバックスクリーンを見たら足が震えた」ことを思い出すという。

 甲子園初出場の新野は1回戦で、強豪の横浜(神奈川)と対戦した。

 六回まで無安打に抑えられた。だが、2点を追う八回に章さんの二塁打を含む集中打で6点を奪い、逆転勝ち。猛打に地元は沸き、雨後に次々と生える阿南市特産のタケノコにたとえられて「タケノコ打線」と呼ばれた。

 「甲子園がどんな所なのかよく分からなかったけれど、いつか父と同じ場所に立ちたいと思った」。福田選手は小学1年から父が監督を務める少年野球チームに入り、高校では、新野の監督だった中山寿人氏(62)が総監督を担う阿南光へ進学し、1年秋から3番に座った。

 2年夏の徳島大会は、優勝した徳島商に阻まれ、準決勝で敗退。悔しさをバネに、仲間と1日400回以上を目標にバットを振った。2年秋の四国大会で努力が実った。準決勝で本塁打を放つなど準優勝に貢献し、夢の舞台へたどり着いた。新野として出場して以来の選抜だ。

 19日の豊川(愛知)との1回戦。自分が立った同じ打席で安打を放った息子をスタンドから見つめ、章さんはしみじみと語った。「親子で、同じ舞台に立てたなんて本当に幸せ。自分は2回戦で負けたので、息子には次の試合もがんばってほしい」

 熊本国府との2回戦は24日。福田選手は「自分の打撃で投手をしっかり援護し、勝利に貢献したい」と意気込んだ。(吉田博行、大蔦幸)