(22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 報徳学園3―2愛工大名電) 野球ができるのは、当たり前じゃない。だからいつも、「全力プレー」。 その思いを代々受け継ぐチームがある。29年前の阪神・淡路大震災直後の選抜大会に出場した報徳学園(兵庫…

 (22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 報徳学園3―2愛工大名電)

 野球ができるのは、当たり前じゃない。だからいつも、「全力プレー」。

 その思いを代々受け継ぐチームがある。29年前の阪神・淡路大震災直後の選抜大会に出場した報徳学園(兵庫)だ。兵庫県西宮市にあるグラウンドがひび割れるなど、被害を受けた。

 当時監督の永田裕治さん(現日大三島監督)は振り返る。満足に練習できず、動かない体を奮い立たせて選手がプレーしたこと。「ようやった」と被災者が喜んでくれたこと。一生懸命やるだけで、伝わるものがあると知った。

 当時中学生だった大角健二監督は入学後に震災時の話を聞いた。「当時は多くの支援があって野球ができた。今は野球ができる喜びを実感しにくい。せめて知識だけでも」。選手たちへ、折に触れて話す。

 昨年からは、震災の教訓を伝える神戸市内のイベントで、選手がボランティア活動をしている。今年も1月、主将の間木歩ら選手30人が事前にレクチャーを受け、集団避難時の誘導や、がれきをよける歩き方などを一般の参加者に伝えた。西宮市出身の豊田佑京(うきょう)は「僕は震災を経験してないけど、地元でもあるし、報徳でもあるからこそ、身近に感じることができる」と話す。

 1月4日の練習始めには、能登半島地震の被災者へ黙禱(もくとう)した。この日の試合、好守備で何度もピンチの芽を摘み取り、延長戦を勝利。主将の間木は言う。「自分たちができるのは全力プレー。最大限できたと思います」。一生懸命は、きっと誰かに届く。(大坂尚子)