■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目 (22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 大阪桐蔭7―1北海) 8安打で7得点ですか。理想的ですね。大阪桐蔭は打球が飛ばないとされる新基準のバットにも対応できている印象です。 球をしっかりたたいて低い打球で野…

■智弁和歌山前監督 高嶋仁の目

 (22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 大阪桐蔭7―1北海)

 8安打で7得点ですか。理想的ですね。大阪桐蔭は打球が飛ばないとされる新基準のバットにも対応できている印象です。

 球をしっかりたたいて低い打球で野手の間を抜いたり、変化球をうまくバットに乗せたり、強打というより巧打が目に付きました。

 三回2死満塁で岡江伸英選手が変化球を合わせて左前に落とし、2点適時打としました。追い込まれた後強振せず、うまい打撃でした。

 これで西谷監督は甲子園通算68勝目。勝利数で僕の(歴代最多)記録に並びました。

 この数年、甲子園に出るたびに騒がれていたので、本人は気にしていたみたいです。

 2月に西谷君と食事をしました。そのときに「気にするな。記録は破られるためにあるんやから」と言いましたよ。

 まあ、半分負け惜しみを言えば、時代も違うし、あちらは全国から優秀な選手を集めているけれど、僕はほぼ和歌山だけで、軟式出身の選手たちを鍛え上げたというところかな(笑)。

 でも、負けられない重圧の中で毎回、甲子園で優勝を狙えるチームをつくってくる。プロ野球で活躍するような選手を育てているところもすごいですね。

 同じ近畿地区で監督をしていましたが、公式戦ではあまり対戦したことがなかった。

 それが僕がやめる1、2年前になって、近畿大会や甲子園でも何度も対戦するようになったんです。

 2017年から18年にかけて5試合戦って、一度も勝てませんでした。こっちの勘が鈍ったのかな。

 西谷君は捕手出身でしょう。投手の調子を見極め、相手の狙いを外すところなどがうまいなと思います。

 18年の第90回記念選抜大会は決勝で当たり、2―5で負けました。根尾昂投手に6安打に抑えられ、完投負けを喫しました。スライダーがよかった。

 ウチ(智弁和歌山)の打線は速球に強い。本格派のエース柿木蓮投手が投げてきたら打てる――と思っていたのですが、西谷君はそういう狙いを外すのがうまいんです。

 約2カ月後の近畿大会でも決勝で対戦し、根尾投手に抑えられて負けました。負けっ放しで終わって悔しかった。

 西谷君はあと10年はできるでしょう。甲子園通算100勝も狙えると思います。誰も抜けないような記録をめざしてほしいです。(智弁和歌山・前監督)