(22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 神村学園6―3作新学院) 背番号1じゃない――。試合前、相手の先発投手を知った作新学院の選手たちは「右投げか左投げかも分からなかった」。 神村学園のマウンドに立ったのは背番号7。本職は左翼手の左腕…

 (22日、第96回選抜高校野球大会1回戦 神村学園6―3作新学院)

 背番号1じゃない――。試合前、相手の先発投手を知った作新学院の選手たちは「右投げか左投げかも分からなかった」。

 神村学園のマウンドに立ったのは背番号7。本職は左翼手の左腕、上川床(かみかわとこ)勇希だった。利き手中指を骨折し、昨秋は一度も投げていなかった「隠し玉」だ。

 上川床自身も「まさか先発とは思っていなかった」。この日の朝に言われてびっくりしたが、「思い切っていった」。左打者が6人並ぶ打線を100キロ台の大きなカーブで翻弄(ほんろう)した。

 小田大介監督が先発を決めたのは「相手が作新学院と決まった瞬間」だった。

 2016年夏に全国を制した作新は先攻を好み、序盤からたたみかける攻撃が脅威だ。「普通の勝負をしては勝てない」と継投策を練り上げ、思惑通りに上川床が出ばなをくじいた。

 六回に2点を失っても、まだエースは出さない。背番号17の右腕千原和博、背番号19で左腕の釜昊暉と細かくつなぐ。「後ろに投手が何人もいるので、思い切って投げられた」と釜。

 リードしたまま七回途中、ついに背番号1がマウンドへ。左腕の今村拓未は「任された以上は絶対に逃げ切りたかった」。3回を無失点で試合を締めくくった。

 「向こうの作戦に対応できなかったのが、敗因につながった」とは作新学院の主将の小森一誠。相手の映像やデータが簡単に手に入る時代。それを逆手に取った継投を、神村の投手陣と小田監督は「魂のリレー」と呼んだ。(平田瑛美)