■(大相撲春場所12日目 ○豊昇龍―●尊富士) 同い年の大関が、歴史的な連勝記録を止めた。 立ち合いから一気に土俵際に押し込まれた。そこからが、豊昇龍の真骨頂だった。抜群の足腰の強さと、母国モンゴルで磨いた柔道の投げの技術。尊富士の推進力も…

■(大相撲春場所12日目 ○豊昇龍―●尊富士)

 同い年の大関が、歴史的な連勝記録を止めた。

 立ち合いから一気に土俵際に押し込まれた。そこからが、豊昇龍の真骨頂だった。抜群の足腰の強さと、母国モンゴルで磨いた柔道の投げの技術。尊富士の推進力も巧みに使った。半身になって右足をかけ、右の小手投げ。一瞬の逆転劇で館内を沸かせた。

 「まわしを取りたかったけど、取れなかった。出足が速かった」。そう相手を認めつつ、風呂から上がった支度部屋で24歳の表情には、納得感が漂っていた。「しっかり集中できたし、体が動いた。同級生には、負けられない」

 尊富士が前日に並んだ、新入幕力士の初日からの歴代最長記録となる11連勝。64年前、大鵬の12連勝を阻止したのは、2歳年上の小結柏戸だった。両者はのちに横綱へ同時昇進を果たし、互いのしこ名から「柏鵬(はくほう)時代」と言われた一時代を築いた。

 そのいきさつを知っているか? そう問われると、待ってましたと言わんばかりに目を細めて笑った。

 「昨日知りました。すごいねー! 俺も横綱になる? がんばりたいっす」

 110年ぶりの新入幕優勝がかかる尊富士が星二つ先行し、有利な状況は変わらない。それでも、この日の勝利で13日目での優勝決定はなくなった。

 豊昇龍は言う。「まだ場所は終わったわけじゃない」。賜杯(しはい)を諦めてはいない。(松本龍三郎)