(21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 広陵3―1高知) 少し意地になったような牽制(けんせい)球に、エースの決意があらわれていた。 五回1死、広陵(広島)の高尾響が6番打者に死球を与えた直後だ。この試合で許した、初めての四死球だった。…

 (21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 広陵3―1高知)

 少し意地になったような牽制(けんせい)球に、エースの決意があらわれていた。

 五回1死、広陵(広島)の高尾響が6番打者に死球を与えた直後だ。この試合で許した、初めての四死球だった。

 リードは2点で、打順は下位打線へ。バントの構えをする次打者へ1球投げるたび、一塁への牽制球を挟んだ。スリーバント失敗に仕留めて2死後、8番打者への初球を投じる前にも、2球続けて一塁へ。

 結局、打者2人の間に計8球。たしかに1点もあげたくない場面ではあるが、一塁走者は昨秋0盗塁。それでもしつこく牽制したのには、理由があった。

 「安打はしょうがないけど、(四死球は)防げる分、嫌です」

 1年生の春から伝統校の「1」を背負う右腕には、苦い経験がある。

 慶応(神奈川)と戦った昨夏の全国選手権3回戦。一、三回ともに先頭打者への四球から得点を許し、主導権を握られた。延長タイブレークの末に敗れ、「自分が試合の流れを崩した」と悔やんだ。

 あれから7カ月。大会屈指の投手として甲子園にかえってきた右腕は序盤を直球主体、中盤はスライダーやスプリットを効果的に交えた。11奪三振。味方の失策絡みの1失点完投劇に中井哲之監督も「攻めるところは攻め、かわすところはかわす。(高尾)響らしかった」とうなずいた。

 狙うのは広陵にとって4度目の春頂点。自身3季連続の甲子園で、高尾は己にわずかな隙も許さない。(大坂尚子)

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 ○中井哲之監督(広) 「八回は延長タイブレークもよぎったが、高尾がよくしのいでくれた。そこで最少失点に抑え、追加点を取れたのが大きかった」