(21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 青森山田4―3京都国際) 2年前の選抜大会に出場するはずが、コロナウイルスの集団感染で開幕前日に辞退した京都国際が春の甲子園に登場した。21日の1回戦で青森山田に敗れたが、選手たちは「あのとき」の…

 (21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 青森山田4―3京都国際)

 2年前の選抜大会に出場するはずが、コロナウイルスの集団感染で開幕前日に辞退した京都国際が春の甲子園に登場した。21日の1回戦で青森山田に敗れたが、選手たちは「あのとき」の先輩の思いも胸に最後までグラウンドを駆け回った。

 「選抜に出られなかった先輩たちの思いも甲子園に連れていかないと」。選抜出場が決まった日、中崎琉生(るい)主将(3年)はこう語っていた。

 学校の校舎入り口近くには2022年の選抜出場を記念する石碑がある。メンバーらの名前とともに、「コロナ感染の為出場辞退」と刻まれている。

 中崎主将は石碑を見るたび、先輩の悔しさを想像した。小牧憲継監督にはミーティングで「一生懸命頑張っていたら、悔しい思いをした先輩たちが必ず後押ししてくれる」と言われてきた。

 この日の試合で、中崎主将は先発した。「先輩に勝利を届けたい」。気持ちを入れてマウンドに立った。

 一回に2点を先制されたが終盤まで食らいつき、八回に同点に追いついた。直後の守りは3人で仕留めたが、九回にサヨナラ打を許した。試合後、選手たちはアルプススタンドに駆け寄り、深々と頭を下げた。

 アルプスには2年前のOBたちが駆けつけた。内野手でベンチ入りする予定だった上野楓真さん(19)と石田紘大(こうた)さん(同)は、後輩たちの頑張りに拍手を送り続けた。「負けたけれど、みんな楽しんでプレーできていた」とたたえた。

 投手でベンチ入りする予定だった森田大翔(ひろと)さん(同)は「選抜に出たくても出られなかった僕らの思いも胸に戦ってくれたらうれしい」と、この日はテレビで観戦した。

 2年前のあの日、出場辞退の現実をなかなか受け止められなかった。野球ができるのは当たり前ではない――。森田さんは今、その思いを胸に大学で野球を続けている。

 「僕たちにとって選抜は特別な場所だった。(後輩には)今日の負けを糧に、夏に向けたステップにしてほしい」とエールを送った。

 中崎主将は「自分の気持ちの弱さで先輩たちに勝利を届けられず悔しい。夏までに気持ちの弱さを克服したい」と前を向いた。(西崎啓太朗、関ゆみん)