(21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 宇治山田商5―4東海大福岡) 4―4の同点で迎えた宇治山田商(三重)の六回の攻撃。1死一、三塁で、加藤一路(いちろ)はバントの構えを2度したものの、どちらもバットを引いてしまった。 ベンチのサインは…

(21日、第96回選抜高校野球大会1回戦 宇治山田商5―4東海大福岡)

 4―4の同点で迎えた宇治山田商(三重)の六回の攻撃。1死一、三塁で、加藤一路(いちろ)はバントの構えを2度したものの、どちらもバットを引いてしまった。

 ベンチのサインはセーフティースクイズだった。この痛いサイン見逃しで、カウントは2ストライクに。それでもめげない。

 「自分は打撃が得意ではない。『打てたらラッキー』という楽な感じでした」。気持ちを切り替え、左前へ勝ち越し適時打を放った。

 背伸びをしない身の丈に合ったプレースタイル。2年生ながらチームが目指す野球を体現する9番打者の二塁手だ。

 練習では犠打に多くの時間を割く。「チームには打てる打者が多くない。助け合って攻撃をしなくては」。四回には磨きあげたその小技で絶妙のゴロを転がし、相手エースを揺さぶり、貴重な追加点を呼び込んだ。

 宇治山田商は昨秋の東海大会は準決勝で負けた。1点差の惜敗だった。その悔しさを胸に冬を過ごした。この甲子園でも、似たような競り合いの展開になったが、今度は勝ちきった。

 「やれることをしっかりやろう」

 チームで統一した意識を貫き、1回戦突破のキーマンとなった。(福角元伸)