阿南光は19日、大会第2日の第1試合で、昨秋の東海大会覇者、豊川(愛知)と対戦。序盤からリードを奪い、11―4の大差で破った。阿南光の選抜出場は再編統合前の新野(あらたの)が1992年に出場して以来32年ぶり、2回目。現在の校名になってか…

 阿南光は19日、大会第2日の第1試合で、昨秋の東海大会覇者、豊川(愛知)と対戦。序盤からリードを奪い、11―4の大差で破った。阿南光の選抜出場は再編統合前の新野(あらたの)が1992年に出場して以来32年ぶり、2回目。現在の校名になってからは春夏通じて初の甲子園勝利を飾った。

 阿南光は初回、福嶋、西村の連打で無死二、三塁とし、二つの内野ゴロの間に走者が生還して2点先制。さらに二回2死満塁の好機に、西村の走者一掃の適時二塁打で3点を挙げた。九回は打者一巡の猛攻で一挙6点を奪い、突き放した。エース吉岡は終盤に豊川の強打者、モイセエフに本塁打を許したものの、変化球を駆使して11奪三振を挙げ、完投勝利した。

 次戦は大会第6日第3試合(23日午後2時開始予定)の2回戦で、熊本国府(熊本)と対戦する。(吉田博行)

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 (19日、第96回選抜高校野球大会1回戦 阿南光―豊川)

 阿南光(徳島)の出場選手20人は全員が徳島県内出身。うち9人は中学時代、阿南市を拠点にする硬式野球チーム「徳島阿南シティホープ」に在籍していた。

 主将を務める井坂琉星捕手(3年)とエース右腕吉岡暖投手(3年)も「シティホープ」の元メンバーだ。中学1年からバッテリーを組み、全国大会での優勝も経験した。

 中学3年の時、井坂捕手は卒業後の進路を悩んだ。初めは徳島県外の強豪への進学を考えていた。だが、「シティホープ」の吉岡投手や、現在は阿南光の4番打者の住江慶次郎選手(3年)から「地元に残って一緒にやろう」「甲子園を狙える」と引き留められた。数カ月悩んだ末、仲間とともに地元の阿南光へ進むと決めた。

 1年秋から、井坂捕手は正捕手として、背番号1を背負う吉岡投手の球を受け続けた。2年秋からは主将となり、チーム全体を見渡しながら練習に打ち込んだ。昨秋の四国大会では太ももを負傷し、痛みをこらえながら懸命に吉岡投手をリードし、準優勝した。

 井坂捕手から見ると、吉岡投手は「調子に乗りやすい。だから練習中はあえて厳しい声をかけるようにしている」。吉岡投手は、そんな自分の性格を知り尽くした相方に、全幅の信頼を置いた。「自分の伝えたいことを、すぐに受け止めてくれる」

 そして迎えた夢の舞台での初戦。

 井坂捕手は、吉岡投手がピンチを迎えるとマウンドに駆け寄り、「とにかく頑張ろう」と励ました。自分が打席で頭部に死球を受けるアクシデントにも見舞われたが、高橋徳(あつし)監督に自ら「行かせてほしい」と申し出て、最後までミットを構え続けた。

 試合後、吉岡投手は「しんどかったと思うが、主将としてみんなに声を掛け、最後までチームをまとめていた」と井坂捕手の奮闘をねぎらった。

 井坂捕手は、病院で検査を受け、打撲傷と診断された。一両日は様子を見るという。代表取材に応じて「チームみんなで校歌を歌えて感慨深かった。しっかりと一戦ずつ勝ち進んでいきたい」とのコメントを出した。(吉田博行)