(19日、第96回選抜高校野球大会1回戦 明豊1―0敦賀気比) 「一つ勝つっていうのは難しい」 敦賀気比(福井)の東哲平監督は試合後、下を向きながら、絞り出すように言った。 九回サヨナラ負け。2015年春の王者が、選抜はこれで4年連続の初戦…

(19日、第96回選抜高校野球大会1回戦 明豊1―0敦賀気比)

 「一つ勝つっていうのは難しい」

 敦賀気比(福井)の東哲平監督は試合後、下を向きながら、絞り出すように言った。

 九回サヨナラ負け。2015年春の王者が、選抜はこれで4年連続の初戦敗退。最後の勝利は、16年の1回戦までさかのぼる。

 そのときのエースが、オリックスの山崎颯一郎。最速160キロの25歳は当時、まだひょろっとした体格だった。

 いまやパ・リーグ3連覇中の球団で主力の右腕にも伸び悩んだ時期がある。3年目には右ひじを手術。そのオフに戦力外通告を受け、育成選手になった。

 「(クビを)切られる」と目の色を変えて肩やひじのケアについて勉強し、ウェートトレーニングにも励んだ。当時を「ターニングポイントだった」と振り返る。

 オリックスが阪神と戦った昨年の日本シリーズを、後輩たちは寮の食堂でテレビ観戦した。主将の西口友翔は「偉大な先輩に、一歩ずつ近づいていきたい」と力を込める。

 苦しい時期は誰にでも必ずある。この日の悔しさをどうバネにできるか。同じグラウンドで基礎を築いた先輩のように――。(高橋健人)